※お酒は20歳になってから
お酒を楽しみたいけれど、日本酒やワインは種類が多すぎてどこから始めていいかわからない。そんな初心者の方に向けて、まず飲みやすい銘柄から始めて、徐々に好みを見つけていく方法をご紹介します。
この記事では、日本酒専門店やワインショップのソムリエ、酒造関係者への取材をもとに、初心者でも失敗しない選び方と、絶対に押さえておきたいおすすめ銘柄を厳選しました。筆者自身も「白ワインから日本酒にハマった一人」として、実際に100本以上の日本酒・ワインを試飲した経験から、本当に飲みやすい銘柄だけをピックアップしています。

日本酒・ワイン初心者が知っておくべき基本知識
日本酒とワインは同じ醸造酒でありながら、製造方法から楽しみ方まで大きく異なります。まずはこの違いを理解することで、より深く味わえるようになります。それぞれの特徴、アルコール度数と味わいの違い、甘口・辛口の見分け方を確認していきましょう。
日本酒とワインの根本的な違いを理解する
日本酒は米を原料とした並行複発酵の醸造酒、ワインはブドウを原料とした単発酵の醸造酒です。
日本酒の原料である米には糖分が含まれていないため、麹菌の力を借りてデンプンを糖分に変化させる必要があります。この糖化と酵母によるアルコール発酵が同じタンクで同時に行われる「並行複発酵」が日本酒の特徴です。一方、ワインの原料であるブドウには、もともと糖分が含まれているため、酵母を加えてそのまま発酵が進む「単発酵」となります。
実際に飲み比べてみると、日本酒は15-16度、ワインは10-14度程度のアルコール度数が一般的です。また、日本酒は5℃前後に冷やしても、60℃近くまで温めても美味しく飲むことができる世界でも類を見ない柔軟性があります。対してワインは基本的に各種類の適温での提供が推奨されます。
日本酒の製造工程は世界の他のお酒と比較にならないほど複雑で高度な技術を必要とします。この基本的な違いを理解することで、それぞれの魅力をより深く味わえるようになります。
アルコール度数と味わいで選ぶ初心者向けの基準
日本酒は一般的に15度前後、ワインは12度前後で、初心者には低アルコールタイプから始めることを強くおすすめします。
アルコール分は酒税法により表示が義務付けられており、ラベルで必ず確認できます。最近は10度程に抑えた初心者の方でも飲みやすい日本酒も数多く販売されています。例えば「上善如水 純米吟醸」(14度)や「白鶴 まる」(12度)などがあります。ワインでも「国産ぶどう品種ヤマ・ソーヴィニヨン」(8度)など、かなり低アルコールで飲みやすい商品が登場しています。
筆者の経験上、日本酒では「獺祭 純米大吟醸45」(16度)、「久保田 千寿」(15度)などが定番で、フルーティーな香りと飲みやすさのバランスが絶妙です。ワインでは「白ワインの甘口」(11-12度)や「ライトボディの赤ワイン」(12-13度)が初心者に最適です。
アルコールは体内への吸収されやすさで酔いやすさが決まります。冷たい白ワインや冷酒は後から酔いがまわり、体温に近いものは早く吸収されます。初心者は適量を心がけ、必ず水と一緒に飲むことが大切です。
甘口・辛口の科学的な見分け方
日本酒は日本酒度、ワインはアルコール度数と残糖量で甘辛を客観的に判断できます。
日本酒度とは糖分の量を示す科学的指標で、数値が低いほど糖分が多い甘い口当たり、数値が高いほどアルコールを強く感じる辛口です。この数値は「甘辛度計算式:{193593÷(1443+日本酒度)}-(1.16×酸度)-132.57」で算出されており、数値が高いほど甘口、低いほど辛口とされます。
ワインでは醗酵が進むほど糖分がアルコールに変化するため、アルコール度数が高くなれば残糖が少なくなり辛口になる傾向があります。スパークリングワインでは、ワイン1Lあたりの残糖量によって「ブリュット」(辛口)、「ドゥミ・セック」(やや甘口)など明確に分類されています。
具体的には、日本酒では「日本酒度-3〜-5で甘口」「+3〜+5で辛口」。ワインでは「12.5%以上の度数のワインは辛口」が目安となります。日本酒度-3.4~-5.9の度数であれば口当たりが軽くてフルーティーな飲み口が楽しめます。
ただし、甘辛度は酸度・アミノ酸度・アルコール度数などにも影響されるため、数値上は辛口でも甘みを感じる銘柄もあることを覚えておきましょう。
初心者におすすめの日本酒・ワイン銘柄
酒類専門店での豊富な試飲経験と、ソムリエ・日本酒専門家への取材をもとに、初心者が最初に飲むべき銘柄を厳選しました。まずは有名銘柄から始めて自分の好みを見つけ、コストパフォーマンスの良い商品で経験を積んでいく方法をご紹介します。
日本酒初心者が最初に飲むべき定番銘柄
「八海山」「久保田」「獺祭」など、日本酒に詳しくない人でも知っているような有名銘柄から選ぶのが最も確実な方法です。
このような銘柄を飲んでみることで、例えば獺祭が好みであれば、酒店で「獺祭に似たお酒が欲しい」とリクエストできるようになります。酒店のスタッフは有名銘柄を知り尽くしたプロであるため、予算に合わせて獺祭のようなフルーティなお酒を的確にセレクトしてくれます。これが「指標銘柄」を持つことの最大のメリットです。
実際におすすめできる具体的な銘柄は以下の通りです:
獺祭 純米大吟醸45:山田錦を45%まで磨いた純米大吟醸で、フルーティーな香りと透明感のあるエレガントな味わいが特徴。お高いと感じるかもしれませんが初心者でも「日本酒ってこんなに美味しいんだ」と実感できる一本です。

獺祭 だっさい 純米大吟醸45 1800ml 日本酒 旭酒造
久保田 千寿:新潟県の朝日酒造が造る淡麗辛口の代表格。バランスの良い味わいで、和食との相性が抜群です。

久保田 千寿 (吟醸)1800ml 久保田 朝日酒造 日本酒
八海山 特別純米酒:全体的に軽快な飲み口で後味もキリッとした苦味がわずかに残る程度。初心者にも飲みやすく、甘口好き・辛口好きの双方から高い評価を獲得しています。

八海山 特別純米酒 原酒 1800ml
純米酒や純米吟醸酒は米と米麹、水だけで造られているため、米のふくよかな香りと旨味をダイレクトに味わうことができ、初心者にも理解しやすい味わいです。
ワイン初心者向け確実におすすめできる銘柄
初心者には白ワインの甘口、ロゼワイン、ライトボディの赤ワインから始めることを強くおすすめします。
白ワインは赤ワインに比べてタンニン(渋み成分)が少なく飲みやすく、ロゼワインは爽やかで甘みのある味わいのものが多く、ワインを飲み始めたばかりの方に最適です。ブドウ品種の個性を知っておくのが、自分の好みにたどり着く一番の近道となります。
筆者が実際に試飲して初心者におすすめできる銘柄:
白ワイン:
- コノスル ゲヴェルツトラミネール:チリ産の甘口白ワイン。ライチのような華やかな香りで、スーパーでも購入可能

コノスル・ゲヴェルツトラミネール・ビシクレタ【チリ】【白ワイン】【750ml】【辛口】
- シャブリ:フランス・ブルゴーニュ地方のシャルドネ。ミネラル感のあるすっきりとした味わい

[2023] シャブリ 750ml ジャック ブルギニョン (ブルゴーニュ フランス)
赤ワイン:
- コノスル カベルネ・ソーヴィニヨン:チリ産。フルーティーで後味の渋みが少なく、初心者に最適

コノスル ヴァラエタル カベルネ・ソーヴィニヨン チリ 赤ワイン 750ml
- ボジョレー・ヌーヴォー:フランス産ガメイ種。軽やかで果実味豊か

ジョルジュデュブッフ ボジョレ—ヌーボー 2024 750ml 赤 ボジョレヌーボー
ロゼワイン:
- プロヴァンス ロゼ:フランス南部産。軽やかで華やか、食事を選ばない

シャトー ド ロムラード キュヴェ マリー クリスティーヌ プロヴァンス ロゼ 2022 ロゼワイン フランス 375ml
ワイン初心者にとってお気に入りワインを探す近道は、他のお酒や飲み物の好みをヒントにすることです。普段甘いお酒を好む方は甘口ワインから、ビールやハイボールを好む方は辛口から始めることで失敗が少なくなります。
失敗しない選び方と飲み方のコツ
酒類専門店での購入から自宅での保存、料理との組み合わせまで、初心者が知っておくべき実践的なノウハウをお伝えします。プロの知見と実体験に基づいた、本当に役立つ情報だけを厳選しました。
酒類専門店での効果的な相談テクニック
「飲みやすいワイン」ではなく、「〇〇な味わいで飲みやすいワイン」と具体的に伝えることが、理想の一本に出会うための最重要ポイントです。
「飲みやすいワインください」は実はソムリエを最も困らせる質問です。なぜなら、どんな味わいのタイプを「飲みやすい」と感じるかは人それぞれだからです。しかし、具体的な好みや用途を伝えることで、プロが持つ豊富な知識と経験から、あなたにぴったりの商品を選んでくれます。
効果的な相談方法の具体例:
- 「甘めでフルーティーな日本酒を探しています」
- 「軽やかで酸味のある白ワインはありますか」
- 「渋みが少なくて果実味豊かな赤ワインをお願いします」
- 「ワインを飲み始めたばかりの初心者で、すっきり系の甘口が好みです」
さらに重要なのは場面を伝えることです。ホームパーティなどの華やかなシーンなら純米大吟醸をワイングラスで、暑い日にキンキンに冷やして飲みたいならキレ味の良い淡麗辛口、鍋に合わせてお燗で楽しむなら純米酒など、用途も併せて相談しましょう。
筆者の経験上、正直に「初心者で何も分からない」と伝えた方が、親身になってくれる店員さんが多いです。
自宅での適切な保存方法と最適な飲み方
日本酒は冷蔵庫で5〜8度程度に冷やした「冷酒」、ワインは種類に応じた適温で楽しむのが基本中の基本です。
冷やすことで日本酒独特のアルコール臭やクセが抑えられるため、初心者には格段に飲みやすくなります。香り高さやフレッシュさを堪能するなら冷酒が最適で、特に華やかでフルーティーな味わいの吟醸酒や、しぼりたての生酒には冷酒が推奨されています。
適切な温度設定(専門家推奨):
- 日本酒:冷酒(5-8℃)、常温(20℃)、ぬる燗(40℃)、熱燗(50℃)
- 白ワイン:6-10℃でしっかり冷やして
- 赤ワイン:16-18℃(少し冷やす程度、冷蔵庫で30分程度)
- スパークリング:4-6℃で十分に冷やして
保存時の注意点として、開栓後の品質劣化があります。日本酒は冷蔵庫で1週間程度、ワインは赤で3-5日、白で2-3日が目安です。ワイン用真空ポンプや専用キャップを使うとより長期保存が可能になります。
初心者が混同しやすいのが「冷酒」と「冷や」の違いです。「冷や」とは冷やしていない常温(20℃程度)の日本酒のことを指します。また、初心者の場合は「和らぎ水」と呼ばれるチェイサー(水)を一緒に飲むと体への負担が軽減されるため強く推奨します。
料理との相性を楽しむペアリング入門
日本酒は和食全般、ワインは料理の色や重さ、調理法に合わせて選ぶのがペアリングの基本です。
本醸造酒は控えめの香りにスッキリとしたキレのよい辛口の味わいが特徴で、飲み飽きしにくく料理の味も邪魔しにくいため食中酒として最適です。一方、ワインには「白身魚には白ワイン、赤身肉には赤ワイン」という世界的な基本ルールがあり、これに従えば大きな失敗はありません。
実際に試して美味しかった組み合わせ:
日本酒のペアリング:
- 純米酒×鯖の味噌煮、筑前煮(味噌や醤油ベースの料理)
- 純米吟醸×刺身、寿司(魚の旨味を引き立てる)
- 大吟醸×天ぷら(上品な香りが油っぽさを中和)
ワインのペアリング:
- 白ワイン×魚料理、チーズ、サラダ(酸味が魚の臭みを消す)
- 赤ワイン×牛肉のステーキ、ラム肉の香草焼き(タンニンが肉の脂と調和)
- ロゼワイン×中華料理、エスニック料理(香辛料との相性が良い)
- スパークリング×揚げ物全般(炭酸が口の中をリセット)
重要なのは、パスタ、サラダ、ハンバーガー、ステーキなど、普段食べている食事に合わせて気軽に楽しむことです。難しく考えすぎず、「今日の夕食に合うかな?」程度の気持ちで試してみることで、新しい発見があります。
まとめ
日本酒・ワイン初心者の方は、まず有名銘柄から始めて自分の好みを見つけることが成功への最短ルートです。日本酒では「獺祭」「久保田」「八海山」、ワインでは「シャルドネ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」などの世界的定番品種から挑戦することで、確実に美味しい体験ができます。
特に重要な3つのポイントは、
①酒類専門店では具体的な好みと用途を伝える。
②適切な温度で保存・提供する。
③料理との相性を楽しみながら学ぶ。
1,500〜2,000円程度の価格帯から始めると、品質と価格のバランスが良く、品種や産地の個性も明確に感じられるため学習効果も高くなります。
決して無理をせず、まずは冷酒や低アルコール商品から始めて、水と一緒にゆっくりと楽しみながら、徐々に好みの幅を広げていけば、必ずあなただけのお気に入りの1本に出会えるはずです。
Q&A
Q1: 日本酒とワイン、どちらから始めるべきですか?
A1: 普段の食事習慣と味の好みで決めることをおすすめします。和食をよく食べる方や米の甘みが好きな方は日本酒、フルーティーな香りを楽しみたい方やチーズなどの洋食を好む方はワインが最適です。迷った場合は、アルコール度数の低い商品が豊富なワインから始める方が安全です。
Q2: アルコールに弱いのですが、楽しめますか?
A2: 近年は8〜10度程度の低アルコール商品が数多く販売されているため十分楽しめます。日本酒では「白鶴 まる」(12度)、ワインでは「ヤマ・ソーヴィニヨン」(8度)などがあります。また、日本酒はロックや水割り、ワインはスプリッツァー(炭酸割り)など、薄めて飲む方法も効果的です。
Q3: 高価な商品でないと美味しくないのでしょうか?
A3: 1,000円台でも十分美味しい商品が豊富にあります。特にチリワイン(コノスル、サンタ・リタなど)や大手酒造メーカーの日本酒(八海山、久保田など)は、コストパフォーマンスに優れた商品が多数あります。価格よりもまず自分の好みを見つけることが重要です。
Q4: 開栓後はどのくらい保存できますか?
A4: 保存条件により大きく変わります。冷蔵庫保存で、日本酒は1週間程度、ワインは赤で3-5日、白で2-3日が品質を保てる目安です。ワイン用真空ポンプや専用キャップを使用すると、さらに2-3日程度延長可能です。一度開栓したら早めに飲み切ることをおすすめします。
Q5: 一人で飲むのにおすすめの容量は?
A5: 日本酒は300ml、ワインは375ml(ハーフボトル)から始めることを強くおすすめします。開栓後の品質劣化を気にせず、様々な銘柄を試すことができるため、初心者の学習には最適なサイズです。慣れてきてから720ml(4合瓶)や750ml(フルボトル)に移行しましょう。
情報ソース・監修:
- カクヤス「初心者でも飲みやすい!おすすめの日本酒20選特集」
- OZmall「日本酒専門家が選んだ、初心者におすすめの日本酒20選」
- ELLE「ワイン初心者におすすめの15本!飲みやすいワインや選び方を徹底解説」
- SAKETIMES「日本酒とワインの違いとは?」
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