※お酒は20歳になってから
神奈川県伊勢原市で1912年から続く老舗酒蔵・吉川醸造が醸す日本酒「雨降(AFURI)」は、伝統的な酒造りの技術と革新的な手法を融合させた注目の銘柄です。2021年4月に新ブランドとして発表されて以来、フランスの権威あるフェミナリーズ世界ワインコンクール2021日本酒部門で金賞・銀賞を同時受賞するなど、国際的な評価を獲得しています。また、モナコSAKEアワードでも受賞を果たし、その品質の高さが世界的に認められています。本記事では、7代目杜氏・水野雅則氏の卓越した技術によって生み出される雨降AFURIの魅力、特徴、購入方法について、業界専門家の視点から詳しく解説します。

雨降AFURIとは|神奈川伊勢原の歴史ある酒蔵の挑戦
雨降AFURIは、1912年(大正元年)創業の神奈川県伊勢原市にある吉川醸造が醸す日本酒ブランドです。酒蔵が位置する場所は、丹沢大山の麓という恵まれた立地にあります。この大山は、古くから雨降山(あふりやま)と呼ばれ、大山阿夫利(あふり)神社とともに、雨乞いの信仰の場として知られてきた歴史ある山です。
ブランド名の由来と大山阿夫利神社との深い関係
雨降AFURIの名前には、地域の歴史と信仰が深く込められています。大山阿夫利神社は酒解(さけどけ)神という酒造の神を祀っており、「雨降」の文字は実際にその神官が、水とお酒に対する感謝の想いを込めて揮毫したものです。これは単なる商標を超えた、地域コミュニティとの深いつながりを示しています。
神奈川県の北西部に位置する丹沢大山は、水の良さとその豊富さで古くから知られています。周辺が晴れていても山頂には雨が降っていたことから「雨降山」と呼ばれ、古来より「雨乞い」信仰の中心地となってきました。この地に降り注ぐ豊かな雨が大地に染み込み、長い年月をかけて濾過された清らかな伏流水こそが、雨降AFURIの味わいの源泉となっているのです。
7代目杜氏・水野雅則氏による革新的酒造り
現在の雨降AFURIを支えているのは、7代目杜氏の水野雅則氏です。水野氏は2006年に吉川醸造に入社し、2012年から杜氏に就任。伝統的な酒造りの技術を継承しながらも、常に新しい挑戦を続けている技術者です。
水野杜氏の特徴的な取り組みとして注目されるのが、酒米をあえて削らず極低温で時間をかけて醸すことで、米の旨みを最大限引きだすという手法です。これは現代の日本酒業界の常識に挑戦する革新的なアプローチといえます。
特に精米歩合90%という低精白での酒造りは、通常では思いもよらない困難を伴います。米の表層部分には様々な栄養素が含まれており、これらが多すぎると雑味が残りやすくなるのが一般的です。しかし、水野杜氏の精妙な技術と雨降山の硬水との相性により、深い味わいと高い香りを持ちながら雑味のない仕上がりを実現しています。
シマダグループによる事業継承と新たなスタート
吉川醸造は2020年に経営危機を迎えましたが、精米店を祖とするシマダグループが事業を継承し、新たなスタートを切りました。この事業継承により、伝統的な酒造りの技術を保持しながら、革新的な経営体制の下で新しい取り組みが可能となりました。
現在の代表取締役である合頭義理氏と常務の二宮慎介氏の経営の下、設備投資や新商品開発が積極的に行われています。これにより、水野杜氏の技術と情熱が存分に発揮できる環境が整い、雨降AFURIブランドの誕生につながったのです。蔵のテーマは「Sake for Life’s Sake」(世界中の人々の生活/人生に寄り添うお酒)として掲げられており、この理念が商品開発にも反映されています。
雨降AFURIの特徴|硬水と低精白が生み出す独特の味わい

雨降AFURIの最大の特徴は、雨降山の地層に濾過されて澄み切った地下伏流水を使用していることです。この水は国内では希少な硬度150~160の硬水で、三本の井戸から汲み上げて酒造りに使用されています。硬水による酒造りは、一般的な軟水とは大きく異なる特徴的な味わいを生み出します。
雨降山の硬水がもたらす発酵の特徴
硬水に含まれる豊富なミネラル分は、酵母の働きを活性化させ、発酵を促進する効果があります。これにより、一般的な軟水で造られる日本酒とは異なる、力強くキレのある味わいが生まれます。吉川醸造では、洗米から仕込み水まで全て、この井戸から湧き出る良質な水を利用しており、一貫した品質管理を実現しています。
日本酒造りには米の質量の約50倍もの水が必要とされるため、この良質な水の存在は雨降AFURIの品質を支える最も重要な要素の一つです。酒造りの世界では「水は授かりもの」と言われますが、まさに雨降山からの恵みである硬水が、雨降AFURIの個性を決定づけているのです。
精米歩合90%への挑戦と米の旨味の追求
雨降AFURIシリーズの特徴的な取り組みの一つが、精米歩合90%という低精白での酒造りです。現在の日本酒業界では、大吟醸酒は精米歩合50%以下、吟醸酒は60%以下が一般的であり、90%という数値は非常に挑戦的といえます。
低精白率での酒造りでは、米の表層部分に含まれるたんぱく質や脂質、でんぷんなどの栄養素が多く残るため、通常は雑味が出やすく、香りも抑えられがちです。しかし、水野杜氏の卓越した技術により、これらの困難を克服し、米本来の旨味を最大限に引き出すことに成功しています。
この「削らない」製法への挑戦により、従来の日本酒にはない独特の味わいと香りを実現。米の持つ本来の力強さとふくよかさを表現した、他では味わえない個性的な日本酒が誕生しています。
多様な酵母と製造技術による豊富なラインナップ
雨降AFURIシリーズでは、伝統的な製法から革新的な技術まで、様々なアプローチを駆使して多彩な商品を展開しています。天然桃色酵母を使用した美しい桃色の「桃色純米・かすみさけ」は、アルコール度数8度という低アルコール設計で、日本酒初心者や女性にも親しみやすい味わいを実現しています。
伝統製法の山廃酛で醸した「山廃仕込純米酒」では、天然乳酸菌の働きを利用し、ライチやマスカットのようなエキゾチックなアロマと複雑で濃醇な味わいを生み出しています。また、水酛仕込みという古典的な製法を現代的にアレンジした商品や、りんご酸酵母を使用した「りんごさんドライ」など、革新的な酵母の活用も積極的に行っています。
雨降AFURIの種類と評価|受賞歴と口コミから見る品質

雨降AFURIは、その卓越した品質により国内外で数々の権威ある賞を受賞しています。特に注目すべきは、フランスの権威あるフェミナリーズ世界ワインコンクール2021日本酒部門での金賞・銀賞同時受賞です。また、「雨降 水野流#01 純米大吟醸【山田錦】」がモナコSAKEアワードを受賞しています。さらに2025年には「雨降///あふり 酒界先導師」が第21回ガラスびんアワード2025で最優秀賞を受賞するなど、継続的に高い評価を獲得しています。
主要商品ラインナップと特徴
雨降AFURIシリーズの代表的な商品として、まず「雨降AFURI 桃色純米・かすみさけ 低アルコール」があります。この商品は雨上がりの桃園をイメージして造られており、天然桃色酵母の働きによる美しい桃色と、果樹園のしぼりたて果汁を連想させるジューシーな甘みが特徴です。アルコール度数8度、日本酒度-66という設計により、甘酸っぱくて軽快な味わいを実現しています。
「雨降AFURI 純米・かすみさけ」は、雨降山にたゆたうかすみをイメージした商品で、リンゴ酸高生産性酵母を使用することにより、爽やかでシャープな酸味と爽麗な甘味のバランスが絶妙です。使用する酒米には、力強さとふくよかさを表現できる岡山県産雄町を100%使用しています。
最も技術的に挑戦的な「雨降AFURI 山廃仕込 純米酒」は、精米歩合90%、麹歩合40%(通常の倍)という設計で醸されています。伝統製法の山廃酛で鍛え上げた酵母と雄渾な米麹、そして雨降山の硬水が交叉することにより、ライチやマスカットのようなエキゾチックなアロマと、複雑かつエレガントで濃醇な甘みの長い余韻を生み出しています。
国際的な受賞歴と権威ある評価
フェミナリーズ世界ワインコンクールは、フランス政府の競争・消費者問題・詐欺防止総局(DGCCRF)で定められた厳格な規定に基づいて審査が行われる、世界的に権威のあるコンクールです。このコンクールの特徴は、世界中の女性ワイン専門家(ソムリエ、醸造家、ジャーナリスト、シェフなど)がブラインドテイスティングで厳正審査を行うことです。
雨降AFURIがこのコンクールで金賞・銀賞を同時受賞したことは、その品質が国際的な専門家によって高く評価された証拠といえます。また、モナコSAKEアワードでの受賞も、雨降AFURIの品質の高さを国際的に証明する重要な指標となっています。
これらの受賞により、雨降AFURIは国内外の日本酒愛好家や業界関係者から注目を集める銘柄となっており、特に女性審査員による高評価は、現代の日本酒市場において重要な意味を持っています。
愛好家からの口コミと市場での評価
日本酒専門サイトSAKETIMEでは、雨降AFURIは評価点3.8点台を獲得し、神奈川日本酒ランキング3位という高い評価を得ています。レビュー数は150を超えており、多くの愛好家から支持されていることがわかります。
実際の愛好家からの口コミでは、「これまで買った日本酒の中で一番栓が飛びました。グラスに注ぐとかなりのシュワシュワで洋ナシの様ないい香りがします」「酸味が少し強めのジューシー甘酸で最後は苦味です」「口当たりはシルキーな感じで柔らかくなり、更に美味しいです」といった具体的な評価が寄せられています。
特に水酛仕込みの商品については「水酛特有の程よい酸味と旨味のバランスが良くて、とても好きな一本」「ブルーベリーヨーグルトジュースのような」という表現もあり、従来の日本酒の概念を覆すような革新的な味わいが評価されています。これらの口コミは、雨降AFURIが日本酒の新たな可能性を切り開いていることを示しています。
まとめ
雨降AFURIは、神奈川県伊勢原市の老舗酒蔵・吉川醸造が、1912年の創業以来培ってきた伝統的な酒造技術と、7代目杜氏・水野雅則氏の革新的なアプローチを融合させて生み出した特別な日本酒ブランドです。大山阿夫利神社との深い精神的な結びつき、雨降山の恵みである硬度150~160の硬水、そして精米歩合90%という挑戦的な製法により、他では決して味わうことのできない独特の個性を持った日本酒を実現しています。
フェミナリーズ世界ワインコンクール2021での金賞・銀賞同時受賞、モナコSAKEアワードでの受賞など、国際的な評価も獲得しており、その品質の高さは世界的に認められています。多様な酵母の活用や伝統的な山廃仕込み、革新的な水酛仕込みなど、様々な製法によって生み出される豊富なラインナップは、日本酒愛好家から初心者まで幅広い層に新たな発見をもたらしています。
雨降AFURIは、単なる地酒を超えた、日本酒の未来を示す重要な銘柄として、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。
購入方法について: 雨降AFURIは、吉川醸造内の販売所または公式ホームページのオンラインストアで購入可能です。また、全国の選ばれた酒販店でも取り扱いがあります。数量限定商品も多いため、公式サイトでの最新情報確認をお勧めします。
よくある質問
Q1: 雨降AFURIはどこで購入できますか?
A1: 吉川醸造内の販売所、公式ホームページのオンラインストア、および全国の選ばれた酒販店で購入可能です。数量限定商品が多いため、公式サイトでの在庫確認をお勧めします。
Q2: 雨降AFURIの特徴的な味わいはなぜ生まれるのですか?
A2: 国内では希少な硬度150~160の硬水と、精米歩合90%という低精白の製法、そして7代目杜氏・水野雅則氏の卓越した技術により、米の旨みを最大限に引き出した独特の味わいを実現しています。
Q3: どのような国際的な評価を受けていますか?
A3: フェミナリーズ世界ワインコンクール2021日本酒部門で金賞・銀賞同時受賞、モナコSAKEアワード受賞など、権威ある国際コンクールで高い評価を獲得しています。
Q4: 日本酒初心者におすすめの商品はありますか?
A4: アルコール度数8度の「雨降AFURI 桃色純米・かすみさけ 低アルコール」は、甘酸っぱくて軽快な味わいで、女性や日本酒初心者の方にも親しみやすくおすすめです。
Q5: 雨降AFURIの名前の由来について教えてください
A5: 地元の大山阿夫利神社の神官が、水とお酒に対する感謝の想いを込めて揮毫した「雨降」の文字に由来します。古くから雨降山と呼ばれた丹沢大山の歴史と信仰に深く根ざした名前です。
参考文献・情報源
- 吉川醸造株式会社公式サイト
- シマダグループ株式会社プレスリリース「老舗日本酒蔵の新たなブランド「雨降(AFURI)」4月17日(土)より発売開始。フランスの権威あるフェミナリーズ世界ワインコンクール2021 日本酒部門で金賞・銀賞同時受賞!」2021年4月14日
- SAKETIME「雨降(AFURI)(あふり)」日本酒評価・通販情報
- SAKE Street「事業譲渡が、杜氏の夢を実現。日本酒「雨降」は神奈川随一の個性を目指す – 神奈川県・吉川醸造」専門記事
- 神奈川県酒造組合「吉川醸造」公式情報