※お酒は20歳になってから
近年、世界中のウイスキー愛好家が注目する「ジャパニーズウイスキー」。その中でも、一度味わえば忘れられない芳醇な香りと、透き通るような余韻で世界を魅了してきた名品があります。サントリーが誇るブレンデッドウイスキー「響(ひびき)」は、まさに日本の自然と文化、そして職人たちの魂が宿る至高の一杯。
本記事では、「響」の歴史からラインナップ、ブレンディングの奥義、そしておすすめの飲み方まで、じっくりと解説します。日本のみならず世界を虜にするその理由を、ぜひ一緒に探求していきましょう。
1. 「響」の誕生と歴史的背景

1.1 サントリーウイスキーの幕開け
「響」を語るうえで欠かせないのは、サントリーと日本のウイスキー史。その源流は、サントリーの創業者である鳥井信治郎が「日本人の舌に合う本格的なウイスキーを造りたい」という思いから、1923年に日本初のウイスキー蒸溜所・山崎蒸溜所を開設したことに始まります。
当時の日本では、ウイスキーづくりの技術やノウハウがまだ十分に確立されていなかったため、試行錯誤の連続。しかし、スコットランドで学びを得た竹鶴政孝らの尽力もあって、サントリーはウイスキーづくりを着実に進化させ、世界でも高く評価される銘柄を次々と輩出するに至りました。
1.2 「響」誕生への道
そんなサントリーが、創業90周年を迎えた節目の1989年に満を持して発売したのが「響」です。当時はシングルモルトが世界的に注目を集めていましたが、サントリーは「日本人の繊細さと職人技術が活きるのはブレンデッドウイスキーにこそある」と考え、多彩な原酒を見事に組み合わせた最高峰を目指しました。
「響」というネーミングは、音が重なり合い共鳴する“ハーモニー”を連想させる日本語ならではの美しさを表現しつつ、「人と自然、時と空間が重なり合って生まれる調和」を意味しています。新しいウイスキー文化の扉を開く一杯として、多くのファンを魅了することになったのです。
2. 多彩なラインナップ――それぞれの「響」の個性
「響」にはさまざまな熟成期間やブレンドの違いによるバリエーションが存在します。代表的なラインナップをご紹介しましょう。
2.1 響 JAPANESE HARMONY

2015年に登場した「響」のスタンダード表現として知られるのが「響 JAPANESE HARMONY」。山崎蒸溜所、白州蒸溜所をはじめとするサントリーのモルト原酒と、チタ蒸溜所のグレーン原酒が巧みにブレンドされています。
フローラルで甘やかな香りと、軽やかで上品な口当たりが特徴。アルコールの刺激が少ないため、初心者にもおすすめできる飲みやすさを持ちながらも、「響」が持つ繊細な世界観をしっかりと堪能できる一本です。
2.2 響17年

かつてのレギュラー商品として根強いファンを持っていたのが「響17年」。近年、原酒不足の影響から終売となり希少性が高まっています。17年以上の熟成による深いコクと、ドライフルーツのような甘み、さらにかすかなスパイシーさが絶妙に絡み合う逸品。オークションや一部の専門店で見かけることはあるものの、プレミア価格がつきやすい銘柄でもあります。
2.3 響21年

「響」のなかでも世界的コンペティションで数多くの賞を受賞してきたのが「響21年」。21年以上の長期熟成原酒をブレンドすることで、驚くほど豊潤で奥深いアロマと口当たりを実現しています。
ドライフルーツや熟成した樽香に加え、シルクのように滑らかなテクスチャーが人気の理由。余韻も長く、飲むほどに多層的な味わいが広がります。まさに至福のひとときをもたらしてくれる銘柄として、多くのウイスキー愛好家を魅了し続けています。
2.4 響30年

「響」ラインナップの頂点に君臨する「響30年」。選び抜かれた長期熟成原酒を用い、その香味は圧倒的な深みと貴賓を備えています。オーク由来の甘いウッディさ、熟した果実を思わせるトロピカルなニュアンス、さらに日本古来の香木を連想させる和の要素が幾重にも重なり合う極上体験。
非常に高額で入手困難なボトルですが、その価値は価格以上と評されることも多く、ウイスキーコレクターやバーのオーナーにとっては“夢の一杯”ともいえる存在です。
3. 秘められたブレンドの妙――「響」が生まれる舞台裏
3.1 山崎・白州・知多――三大蒸溜所の個性
サントリーには、モルトウイスキーをつくる山崎蒸溜所と白州蒸溜所、そしてグレーンウイスキーをつくるチタ蒸溜所があります。さらに、熟成に使われる樽の種類は多岐にわたり、アメリカンホワイトオーク樽、シェリー樽、日本由来のミズナラ樽など、それぞれが全く異なる風味を醸し出します。
「響」のブレンダーたちは、山ほどあるサンプル原酒をテイスティングし、その中から最適なものを選び出していきます。各原酒の個性を活かしつつ、全体として“調和”が取れるようにまとめ上げる作業は、まさに職人技です。
3.2 ミズナラ樽がもたらす“和”の香り
「響」に欠かせない存在が、日本のオークであるミズナラ樽。扱いが難しいとされるミズナラ樽ですが、その木肌から生まれる香りには他の樽にはない独特の魅力があります。しばしば「伽羅(きゃら)」や「白檀(びゃくだん)」にたとえられる気品ある香りは、一度体験すると忘れられない“和”のエッセンス。
ミズナラ樽の原酒を絶妙な割合でブレンドに加えることで、フローラルさやウッディさが一気に高まるのが「響」の大きな特徴といえるでしょう。
3.3 マスターブレンダーの感性
ブレンデッドウイスキーの品質を最終的に決めるのは、人間の感性と経験です。サントリーには歴代受け継がれてきたブレンディングのノウハウがあり、その集大成が「響」に注ぎ込まれています。
マスターブレンダーをはじめとするブレンドチームは、日々のテイスティングとレシピ調整を重ねながら、「響」らしさを保ちつつも常に高品質を追求。こうした熟練の職人技が、「響」が世界から高い評価を受け続ける原動力となっているのです。
4. テイスティングノート――「響」が奏でる味わいのハーモニー
ウイスキーは、香り・味わい・余韻など多角的に楽しめるお酒です。「響」が一般的にどんな特徴をもつのか、主なテイスティングノートをまとめました。
- 香り(アロマ)
フローラルで甘い香りがトップノートとして立ち上がり、バニラや蜂蜜、熟した果物のニュアンスが複雑に交錯します。さらに、ミズナラ由来の白檀やお香のような和の香りが奥行きを与えます。 - 味わい(パレット)
一口含むと、口当たりはシルクのようにやわらか。蜂蜜やカラメルを思わせる上品な甘みと、ほのかなスパイス感、爽やかなシトラス系のアクセントが次々と顔を出します。多層的でありながら、全体的にバランスが良いのが「響」の真骨頂です。 - 余韻(フィニッシュ)
余韻は長めで、じんわりとした甘みや香ばしさが続きます。和のテイストが残るため、どこか心落ち着く印象。飲んだ後も、唇に優しく寄り添うような余韻が楽しめます。
5. 「響」の多彩な楽しみ方
5.1 ストレートで味わう
ウイスキーの魅力をダイレクトに味わいたいなら、やはりストレートが王道。アルコールの刺激がダイレクトに来ますが、その分、香りやコクを余すところなく堪能できます。口の中でゆっくり転がしながら、複雑な風味の移り変わりを感じてみましょう。チェイサーの水を用意しておくと、よりクリアな感覚で味わえます。
5.2 ロックでゆるやかな変化を楽しむ
ロックは、氷が溶けるにしたがって味わいと香りが変化するのが醍醐味。最初のキリッとした印象から、時間の経過とともにやわらかな甘みが際立ちます。「響」の繊細なフローラル感がどのように移ろっていくか、じっくりと観察してみるのも面白い飲み方です。
5.3 水割りで日本料理とのペアリング
日本では昔からポピュラーな水割り。アルコールのトーンが和らぐことで、「響」が持つフローラルな香りやほのかなスパイス感がいっそう際立ちます。薄めることで口当たりがまろやかになり、和食との相性が抜群に良いのも特徴。刺身やお浸し、淡白な塩味系の料理などと合わせると、新たな発見があるでしょう。
5.4 ハイボールで爽快に
近年、日本ではハイボール人気が急上昇。炭酸水で割ることで「響」の華やかな香りが立ち、食事中でもスイスイ飲める爽快感が得られます。レモンピールやオレンジピールを軽く絞ると、さらに香りが華やかになり、飲み口もスッキリ。パーティーシーンや食前酒としてもおすすめの楽しみ方です。
6. 世界を魅了する理由――国際的評価とジャパニーズウイスキーの地位
6.1 数々の受賞歴
「響21年」を筆頭に、「響」は世界的に権威あるウイスキーコンペティションで数多くの賞を受賞してきました。海外のウイスキー専門家からも「この繊細かつ複雑な味わいはどこから来るのか」と絶賛されるほど。その実績は、ジャパニーズウイスキーがスコットランドやアメリカのウイスキー大国と肩を並べるどころか、追い越す存在になり得ることを証明しています。
6.2 ジャパニーズウイスキーの評価を押し上げた立役者
日本のウイスキーは、もともとスコットランドの製法を学びながら発展してきました。しかし、日本ならではの気候風土や熟成環境、そしてミズナラ樽の活用などによって、独自の個性を確立。一方で「響」は、ブレンデッドとしての可能性を極限まで追求し、「日本的な調和と美」を表現する象徴的な存在として世界の目を引きつけたのです。
こうした成功が、ジャパニーズウイスキー全体の評価を飛躍的に高め、多くの海外愛好家が日本の銘柄を求める状況を生み出しています。
7. ボトルに宿る日本の美学――24面体と和紙ラベル
「響」は中身のウイスキーだけでなく、そのボトルデザインにも大きな特徴があります。瓶の形状は24面体になっており、これは一日の24時間や、日本独自の暦である二十四節気を象徴するもの。春夏秋冬の移ろいをこまやかに感じ、季節ごとに変わる自然を愛でる日本人の感性を体現しています。
さらにラベルには和紙が採用され、優美な風合いを演出。ラベルの文字にも日本古来の書の雰囲気が漂い、ボトルを手に取るだけで「和」の精神を感じられるのです。味わいはもちろん、見た目でも日本の美意識を存分に楽しめる点が、「響」が世界中で愛される理由の一つになっています。
8. 入手難と価格事情
ジャパニーズウイスキー全体に言えることですが、海外での人気急上昇や原酒不足の影響で、近年は希少性が高まっています。「響」も例外ではなく、特に年数表記がある17年、21年、30年はプレミア化が進んでいるのが現状。正規のルートで手に入れるのは至難の業であり、あったとしてもかなり高額になることが多いです。
一方、比較的新しい「響 JAPANESE HARMONY」は、まだ流通量が多いため入手しやすいほう。初めて「響」を体験したいという方は、まずはJAPANESE HARMONYから手に取ってみるのが良いでしょう。
9. フードペアリングと上質な時間の過ごし方
「響」は単体でじっくりと味わうだけでなく、食事やおつまみと合わせることで新たな表情を見せてくれます。例えば、ほんのり塩味のきいた和の珍味や白身魚の刺身、さらには淡泊なチーズやドライフルーツとの相性も意外に良いので、ぜひ試してみてください。
また、照明を落とした落ち着いた空間で、好きな音楽を流しながら飲むのもおすすめ。ゆったりとした時間の中で「響」の香りと味わいを満喫すれば、日常のストレスから解放され、心がほどけるような贅沢なひとときを堪能できます。
10. まとめ――「響」が奏でる時の調和

「響」は、その名が示すとおり、さまざまな要素が高い次元で“調和”した奇跡のウイスキーです。山崎、白州、知多といった蒸溜所が生む多彩な原酒、ミズナラをはじめとする多種多様な樽、そして職人たちのブレンディング技術が融合し、芳醇なフローラルノートとシルクのような口当たりが生まれました。
さらに、ボトルデザインに込められた日本の四季や文化へのリスペクトは、世界のウイスキーシーンにおいても唯一無二の存在感を放っています。ジャパニーズウイスキーの評価を押し上げた立役者であり、日本の「和」の精神を体現するアイコンとして、「響」はこれからも世界中の愛好家を魅了し続けることでしょう。
もしまだ飲んだことがないのなら、ぜひ「響」をグラスに注ぎ、その香りをそっと鼻先で楽しんでみてください。口に含むたびに感じる繊細な味わいの変化と、長く心地よい余韻。きっと、それこそが「日本の美」が注がれた一杯であることを、五感で理解できるはずです。日本が世界に誇るウイスキー文化の頂点を、あなたもこの機会に体験してみてはいかがでしょうか。