【白州】森のテロワールが生む繊細な味わいと香りの秘密

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はじめに

近年、日本のウイスキーは世界的にも高い評価を受けています。サントリーが誇る名門蒸溜所の一つである「白州蒸溜所」から生まれるウイスキー「白州」も、その人気の高まりを象徴する一本と言えるでしょう。日本らしい繊細さと豊かな香味を兼ね備えた「白州」は、山梨県の森に囲まれた環境の中で育まれており、自然との調和や深みのある味わいで多くのファンを魅了しています。本記事では、「白州」というウイスキーの特徴や歴史、蒸溜所の魅力、ラインナップや飲み方の提案などを網羅的にご紹介していきます。


白州とは

「白州」は、サントリーが所有する山梨県北杜市の白州蒸溜所でつくられるシングルモルトウイスキーです。ウイスキーには大きく分けてブレンデッド、シングルモルト、グレーンなどいくつかのカテゴリーがありますが、サントリーが1970年代以降に積極的に進めてきたのは“日本の自然環境から生まれるウイスキー”というコンセプトです。「山崎」が京都郊外にある山崎蒸溜所で生まれるのに対し、「白州」は南アルプスの麓、豊かな森と清らかな水に恵まれた環境で蒸溜されることが最大の特徴と言えます。

白州蒸溜所は、標高約700メートルという比較的高地の場所に位置しています。そのため、夏は涼しく、冬は非常に寒冷であるという気候がウイスキーの熟成に独特の影響を与えます。特に「白州」が持つ爽やかな香りや軽やかさは、この自然環境によるところが大きいと言われています。さらに仕込みに使用する水は、南アルプスの天然水を源流とする清冽な地下水で、ミネラルバランスに優れ、ウイスキーの味わいを支える重要な役割を果たしています。


白州の歴史と特徴

白州蒸溜所は1973年に創設されました。当時はすでにサントリーの山崎蒸溜所が稼働しており、日本国内でのウイスキー文化は徐々に根付いてきた時期でしたが、さらなる品質向上と新しい魅力の創出を目指すサントリーの挑戦によって白州蒸溜所が誕生したのです。南アルプスの山深い土地を選んだ理由の一つは、先に述べた良質な水資源の確保でした。南アルプスから長い年月をかけてろ過された天然水は、仕込み水として理想的だったのです。

また、広大な森林に囲まれた立地は、蒸溜所の温度や湿度、さらには熟成庫の環境にまで影響を与えます。霧の発生しやすい場所であることも特徴で、霧が熟成庫内の温度や湿度を和らげることで、ウイスキーの樽熟成に穏やかな影響を与えます。その結果、白州は柑橘系のような爽やかな香りや、スモーキーさを感じさせながらも軽快な口当たりを持つ、独自の個性を確立してきました。


森のテロワール:白州の魅力

ワインの世界でよく使われる“テロワール”という言葉は、土地の風土や自然環境が生む独特の味わいを指します。ウイスキーにおいてもテロワールは存在し、白州蒸溜所の場合は「森の蒸溜所」と呼ばれるほど自然に囲まれた土地で、森林の影響を大きく受けながら蒸溜と熟成が行われます。四季折々に表情を変える森が、適度な湿度や空気の流れを生み出し、樽の中でゆっくりと熟成が進むのです。

さらに白州では、仕込み水や蒸溜の過程だけでなく、発酵、熟成、ブレンドに至るまで一貫して自然との共存が意識されています。森のウイスキーらしく、香りには緑やハーブを思わせるニュアンスが漂い、そこにスモーキーな香気が絶妙に絡んできます。世界的にもスコットランドのような“湿度のある気候”がウイスキーの熟成に向いているとされていますが、白州蒸溜所のある山梨・白州地域は、まさに日本における理想的な気候の一つだと言えます。


製造工程とこだわり

  1. 仕込み水
    前述の通り、白州の仕込み水には南アルプスの天然水が使用されます。雑味が少なく、かつ必要なミネラルを程よく含んでいるため、発酵や蒸溜時に繊細かつ香り高いスピリッツを得ることができるのです。
  2. 発酵
    白州蒸溜所ではステンレス製のウォッシュバック(発酵槽)が使用されています。発酵は酵母の働きによりアルコールを生み出す重要なプロセスですが、白州の場合は気候が比較的冷涼なため、発酵がゆっくり進む傾向にあります。これがエステル(果実の香り成分)などの形成に寄与し、爽やかで芳醇なアロマを生み出します。
  3. 蒸溜
    白州蒸溜所では、サイズや形の異なるさまざまなポットスチルが設置されています。ポットスチルの形状や加熱の仕方は、最終的なウイスキーの味わいに大きな影響を与えます。白州の特徴である軽快な味わいと若々しい香りを活かすために、形状や蒸溜スピードの調整が細かく行われています。
  4. 熟成
    樽に詰められた原酒は、白州蒸溜所の熟成庫で静かに眠りにつきます。ここではバーボン樽やシェリー樽、あるいはミズナラ(ジャパニーズオーク)樽など多様な樽が使われ、それぞれが独特の風味を原酒に付与します。また、白州の特徴として軽めのピート香をもつ原酒も仕込まれており、僅かに香るスモーキーさが全体のアクセントになっています。

白州の味わい・香り

白州をひと口味わうと、まず感じられるのは瑞々しい森林を思わせる爽快な香りです。ピート香を控えめに使っているため、スモーキーさがありつつも過度に主張せず、あくまで繊細なバランスを保っています。味わいはフルーティーで、柑橘系の酸味やハーブのような爽やかさが口の中に広がります。一方、余韻は意外にも柔らかく長く続き、最後にはほろ苦さやほのかなオークの甘みが感じられるのが特徴です。

このように、白州は軽やかでありながら複雑な要素を内包しており、日本のウイスキーならではの“繊細な味わい”を代表する存在と言えます。海外のシングルモルトと比較しても、その個性は十分に際立っており、国際的な品評会などでも高評価を得てきました。


白州のラインナップ

白州にはいくつかの定番アイテムが存在します。代表的なものを挙げてみましょう。

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白州 ノンエイジ
かつては定番として流通量も比較的多かったものの、近年の原酒不足の影響で手に入りにくくなり、販売休止となった時期もありました。軽快な飲み口と爽やかな香りは初心者にもおすすめです。

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白州12年
白州のラインナップの中でも特に有名なのが「白州12年」です。程よい熟成感とフルーティーなニュアンス、そしてスモーキーさが同居する、バランスの良い味わいが魅力。やや甘みを含んだ余韻が心地よく続き、日本のウイスキーの優れた点を感じさせる1本です。こちらも世界的な需要増に伴い、品薄状態が続いています。

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白州18年
12年をさらに上回る長期熟成の一本。より深いコクと複雑味が加わり、飲みごたえも増しています。熟成による樽香やドライフルーツのような甘み、スモーキーさが一体となり、リッチな余韻を楽しめます。値段的にもかなり高価になりがちですが、特別なシーンにふさわしい逸品です。

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白州25年
最上位クラスに位置する超長期熟成の白州。希少価値が高く、市場価格も非常に高額です。深みのある味わい、芳醇な香り、長い余韻といった要素が極まっており、愛好家からは“森の奇跡”とも称えられるほど。手に入れるのは至難の業ですが、まさに一生に一度は味わってみたいウイスキーの一つと言えます。


白州をより楽しむ飲み方の提案

  1. ストレート
    まずは常温のストレートで、白州が持つ香りと味わいの個性をしっかりと体感してみることをおすすめします。鼻を近づけると感じられる緑の香りやハーブ感、そしてわずかなピート香が織り成す複雑なアロマに集中することで、白州ならではの“森のウイスキー”感を堪能できるでしょう。
  2. トワイスアップ
    ストレートに同量の水を加える飲み方です。アルコール度数が下がり、香りが立ち上がりやすくなることで、より繊細なアロマを感じることができます。慣れない方や、白州の優しい一面をじっくり探りたい方に向いています。
  3. ロック
    氷を入れることで徐々に温度が下がり、味わいが変化していきます。はじめは香りが閉じがちですが、徐々に氷が溶けてくると甘みや果実味が際立ち、白州特有のハーブ感をより鮮やかに感じられることもあります。ただし、あまり長時間放置すると風味が薄くなるので、適度に味わいの変化を楽しみつつ飲むのがおすすめです。
  4. ハイボール
    白州ハイボールは多くの愛飲家から支持される人気の飲み方です。柑橘系の爽やかな香りを活かすため、炭酸は強め、レモンやライムなどの柑橘を軽く絞り入れると、より一層フレッシュな味わいを楽しめます。夏場など、爽快感を求める季節にはぴったりで、食事との相性も良く、和食やイタリアンなど幅広い料理と合わせやすいのも魅力です。

白州蒸溜所を訪れる魅力

ウイスキー好きなら一度は訪れてみたいのが、実際に蒸溜所を見学するという体験です。白州蒸溜所は一般の見学プログラムを用意しており、オンライン予約などを通じて申し込むことができます。見学では、蒸溜釜や熟成庫の見学、テイスティングなどを体験できるほか、敷地内にあるバーやショップで限定商品の購入やウイスキーの飲み比べも楽しめます。

周辺は雄大な森や川、さらには自然公園が多数存在し、観光スポットとしても魅力的です。特に新緑の季節や紅葉シーズンには、周囲の木々が色鮮やかに染まり、その中で味わう白州ハイボールはまた格別な美味しさを感じさせてくれます。蒸溜所の見学は、白州が生まれる背景を五感で体験できる貴重な機会となるでしょう。


世界からの評価と希少性

昨今のジャパニーズウイスキーブームにより、世界中で注目される存在となった「白州」。特に「白州12年」は海外の著名なウイスキーアワードで数々の賞を受賞し、日本国内外を問わず極めて高い評価を得ています。しかし、その人気の高まりとともに原酒不足が深刻化し、白州の主要銘柄は販売休止や抽選販売、もしくは高騰したプレミアム価格で取引されるようになりました。

これは一方で、“手に入りにくいウイスキー”としての希少性を高める結果にもなり、白州ブランドの価値をさらに押し上げているとも言えます。近年、サントリーでは増産体制を強化し、少しずつ供給が回復しつつあるものの、以前ほど手軽に入手できる状況には戻っていません。それだけに、もし運良く白州を手に入れることができれば、その味わいの尊さを存分に楽しみたいものです。


日本ウイスキーの未来と白州

白州蒸溜所は、日本のウイスキー文化が世界に認められるまでの道のりを支えてきた重要な存在です。山崎蒸溜所との相互補完によって生まれるブレンデッドウイスキーのクオリティ向上にも寄与してきましたし、シングルモルトウイスキーとしては“日本の森”を感じさせる独特の個性を磨いてきました。

これからも日本のウイスキー市場は国内外で拡大が見込まれます。新興のクラフト蒸溜所の増加やウイスキーづくりの多様化は、日本のウイスキーシーンをさらに活気づける一方で、サントリーのような大手蒸溜所には安定的な供給や品質維持という点で大きな期待が寄せられています。その中で白州が担う役割は、単なる“希少なウイスキー”にとどまらず、“日本が誇る自然の恵みを体現する存在”としてのブランディングを確立していくことにあるでしょう。


まとめ

「白州」は、南アルプスの豊かな水と森が育んだ、日本が世界に誇るシングルモルトウイスキーです。その爽やかかつ奥深い香味は、標高約700メートルという高地と周囲を取り巻く森林、さらには厳選された水と技術者のこだわりが結集した結晶とも言えます。白州蒸溜所に足を運べば、ウイスキーづくりの現場や美しい自然に間近で触れられ、その繊細な風味を作り出す背景をより深く理解できるでしょう。

ラインナップは年数表記の有無にかかわらず、それぞれ異なる個性と魅力を持っています。手に入りづらい状況ではありますが、もし機会があれば白州12年、18年などにチャレンジしてみるのもおすすめです。ストレートやハイボールなど多様な飲み方で楽しめるうえ、日本料理との相性も良いため、食事のシーンに取り入れやすいのも「白州」の強みといえます。

ウイスキー文化が花開き、さらに多様化していく時代だからこそ、“日本ならでは”の味わいを探し求める価値はますます高まっています。その中で白州は、“森を感じるウイスキー”として海外のシングルモルトファンからも一目置かれる存在になりました。自然環境を生かしたウイスキーづくりに携わる人々の思いとともに、深く繊細な味わいがこれからも多くの人々の心をつかみ続けることでしょう。

もし機会があれば、ぜひ一度白州を味わってみてください。緑あふれる森の香りがグラスの中で立ち上り、口に含めば静かに広がるピートの余韻が、まるで深い森の中を散策しているかのような感覚をもたらしてくれます。そんな体験を通じて、日本の自然が育むウイスキーの奥深さを実感できるはずです。


「白州」は、単にスコッチウイスキーの模倣でも、単なるブレンデッド用の原酒でもありません。その個性的な香りとテクスチャー、そして日本の自然環境と蒸溜技術が結晶した一杯は、ウイスキーという飲み物における新たな可能性を広げてきました。今後もますます評価と需要が高まることが予想される「白州」。その背景や魅力を知った上で味わうと、一層深い感動を味わえることでしょう。ぜひご自身の舌と鼻で「白州」の森の息吹を感じ取ってみてください。

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