※お酒は20歳になってから
カサーレヴェッキオ(Casale Vecchio)は、人気漫画「神の雫」第19巻で「イタリアのモン・ペラ」として紹介され、日本のワイン愛好家の間で爆発的な人気を獲得したイタリア産赤ワインです。作中では16000円クラスの高級ワインを圧倒する味わいとして絶賛され、主人公の神咲雫が「この値段で買えるなんて、奇跡のようなワインなんですから」と表現したことから、「奇跡のワイン」とも呼ばれています。
このワインは、イタリア中部アブルッツォ州で生産されるモンテプルチアーノ・ダブルッツォDOCワインで、生産者はファルネーゼ(現在はファンティーニ)です。2000円台という手頃な価格でありながら、徹底した品質管理と独特な製法により、高級ワインに匹敵する濃厚で複雑な味わいを実現している点が最大の魅力となっています。
「カサーレ」はイタリア語で農家の家を、「ヴェッキオ」は古いを意味し、アブルッツォ州の伝統的なワイン造りの手法を現代に受け継ぐという生産者の思いが込められています。モンテプルチアーノ種100%で造られるフルボディの赤ワインで、深いガーネット色と濃厚な果実味、そして長い余韻が特徴的な逸品です。

カサーレヴェッキオワインの基本知識と生産背景
カサーレヴェッキオの基本情報、歴史、生産者について詳しく見ていきましょう。これらの知識があることで、このワインの真の価値と魅力をより深く理解できます。
アブルッツォ州の理想的なテロワールとモンテプルチアーノ品種
カサーレヴェッキオが生産されるアブルッツォ州は、イタリア中部の東海岸に位置し、西にアペニン山脈、東にアドリア海に挟まれた理想的な立地にあります。地中海性気候により夏は暑く乾燥し、冬は温暖で適度な降水量があるため、晩熟タイプのモンテプルチアーノ種の栽培には最適な環境が整っています。
モンテプルチアーノは、イタリアで2番目に多く栽培されている黒ブドウ品種で、アブルッツォ州のブドウ栽培面積の半分以上を占めています。この品種の特徴は、果皮が厚く色素が濃いため、深い色合いのワインが生まれることです。また、豊かな果実味と適度なタンニン、バランスの良い酸味を持ち、フルボディでありながら親しみやすい味わいを生み出します。
カサーレヴェッキオに使用されるブドウは、DOCGコッリーネ・テラマーネ地区内のアトリ、ロゼート、コロンネッラの3ヶ所計50haの畑で栽培されています。海洋性堆積物の混ざる石灰質土壌により、骨格のしっかりとしたボディとミネラル豊富なワインが生まれますが、品質向上とフレッシュでフルーティな親しみやすさを重視して、あえてDOCワインとしてリリースされています。
ファルネーゼワイナリーの創設ストーリーと急成長
ファルネーゼ(現ファンティーニ)の創設は1994年で、カミッロ・デ・ユリウス、ヴァレンティーノ・ショッティ、フィリッポ・バッカラーロの3名によって設立されました。カミッロは若くしてイギリスに渡り3軒のレストランを経営し、ワインの輸入も手がけていましたが、「いつかアブルッツォへ戻り、生まれ故郷に貢献したい」という強い思いを持ち続けていました。
1994年にアブルッツォに帰郷したカミッロは、同じ志を持つヴァレンティーノとフィリッポと出会います。当時アブルッツォのワイナリーで働いていた2人は、「もっとハイレベルのワインを造りたい」という情熱を持っており、3人の出会いがファルネーゼ設立につながりました。ワイナリー名は、16世紀にファルネーゼ家の王子と結婚したオーストリアの王女マルゲリータが、この地でワイン造りに尽力したことに由来しています。
設立当初は資金も乏しく、エントリーレベルのワインしか造れませんでしたが、世界的に著名なワイン評論家ロバート・パーカー・Jr.がモンテプルチアーノ・ダブルッツォを飲んで感激し、「車に積めるだけ買いたい」という記事を書いたことで、ワイナリーの名が少しずつ知られるようになりました。その後、設立わずか10年足らずでイタリア最高峰の評価を獲得する生産者に成長しています。
ブランド名変更とファンティーニグループへの発展
2014年頃から、ファルネーゼは段階的にブランド名を「ファンティーニ」へと変更しています。この変更は、グローバル市場での展開を見据えたもので、特に英語圏やアジア圏では「ファルネーゼ」が読みづらく覚えにくいことから、よりシンプルで親しみやすい「ファンティーニ」へと変更されました。
現在のファンティーニ・グループは、アブルッツォ州からスタートし、南イタリア7つの州でワイン造りを行う一大グループに成長しています。近年はトスカーナやサルデーニャでもワイン造りをスタートし、南イタリアで最も成功したワイン生産者の一つとして確固たる地位を築いています。カサーレヴェッキオも現在は「ファンティーニ・グループ」の看板銘柄として展開されています。

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カサーレヴェッキオの製法と品質の秘密

カサーレヴェッキオが「奇跡のワイン」と呼ばれる理由は、その独特な製法と徹底した品質管理にあります。ここでは、製法の特徴、味わいの秘密、品質管理体制について詳しく解説します。
極限まで絞り込んだ収量制限による濃縮製法
カサーレヴェッキオの最大の特徴は、通常の8房から4房への徹底した収量制限による極限の濃縮製法です。一般的なワイン用ブドウでは、1本のブドウ樹に8房の実をつけますが、カサーレヴェッキオでは厳格な収量制限を行い、1枝につき4房にまで制限して栽培されています。
この収量制限により、残った房にすべての養分とエキスが集中し、通常の3〜4倍の濃縮度を持つブドウが収穫されます。1999年頃は1枝から2房でしたが、ぶどう樹も年を重ねたため現在は4房となっています。それでも一般的なワインと比較して格段に低い収量となっており、この制限により色も濃く、香りも際立った驚くほど凝縮された味わいが実現されています。
この収量制限により、単純計算でもスタンダードタイプの3〜4倍の価格になってもおかしくありませんが、ファルネーゼの「品質の良いワインを少しでも安く」という理念により特別価格で提供されています。通常であれば1本のブドウ樹に8房の実をつけるところ、信じ難いことにたった4房に制限して造られることが、このワインの圧倒的な凝縮感の源となっています。
フレンチオーク新樽熟成による複雑な味わいの構築
カサーレヴェッキオの醸造は、ステンレスタンク発酵とフレンチオーク新樽熟成の組み合わせにより、果実味と樽香の絶妙なバランスを実現しています。発酵はステンレスタンクで行うことで、モンテプルチアーノ種本来のピュアな果実味を保持し、その後アリエ産のフレンチオーク新樽で4ヶ月間熟成することで、バニラやスパイスの香りが加わり、複雑で上品な味わいに仕上がります。
この製法により、ブラックベリーやプラムなどの濃厚な果実味に、バニラ、チョコレート、シナモンなどのスパイシーなニュアンスが複雑に絡み合った多層的な味わいが生まれます。アルコール度数は14%で、フルボディの力強い骨格を持ちながらも、飲みやすさも兼ね備えています。
深いガーネット色を呈し、グラスに注ぐとブラックベリー、プラム、チェリーなどの黒系果実の豊かな香りが立ち上がります。口に含むと濃厚で凝縮された果実味が広がり、適度なタンニンと酸味のバランスが取れた長い余韻を楽しめます。若いうちから美味しく飲めますが、フレンチオーク新樽を使用することで、バニラやスパイスの上質な樽香が付与され、2〜3年の熟成により更に味わいが深まることが知られています。
13名の醸造家チームによる徹底した品質管理
ファンティーニ・グループでは総勢13名の醸造家でワイン造りを行っており、各ワイナリーには専任のワインメーカーが配置されています。創設者の一人フィリッポ・バッカラーロと世界的醸造家アルベルト・アントニーニがスーパーバイザーとして全体を統括し、すべての工程を常に細かく管理しています。
品質の高い葡萄を得るため、専門知識があり情熱を持った小規模農家と長期契約を結んで葡萄を購入する方式を採用しています。広い自家畑を所有し多くの季節労働者を雇うよりも、質の高い葡萄を安定して得られると考え、契約農家とは5年単位の長期契約を結び、量ではなく質の高い畑をヘクタール単位で買い取るシステムを採用しています。このシステムにより、良質なブドウの安定調達を実現しています。
ワイナリーの創設者の一人フィリッポ・バッカラーロは「素晴らしいワインを造るために最も重要なことは、素晴らしい葡萄があることです。しかし、それだけでは十分ではありません。素晴らしい葡萄を素晴らしいワインにするには、葡萄の収穫からできるだけ時間をかけずに醸造を始め、葡萄が適切に扱われることが大切です」と語っており、この哲学が高品質なワイン造りを支えています。

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カサーレヴェッキオの評価と受賞歴

カサーレヴェッキオは国内外で数多くの賞を受賞し、権威ある評価機関からも高く評価されています。ここでは、具体的な受賞歴と評価について詳しく見ていきましょう。
ルカ・マローニで9度の最優秀生産者受賞という快挙
辛口評価で知られるイタリアワインガイド誌「ルカ・マローニ ベストワイン年鑑」において、生産者ファルネーゼが2500以上の生産者の中から9度も最優秀生産者に選出されています。2005年、2006年、2007年と3年連続での受賞をはじめ、2012年、2013年、2015年、2016年、2017年、2019年度版でもトップ生産者として認められています。
ルカ・マローニは、ワインの果実味と心地良さに重点を置いた個性的な評価基準とその辛口評価で知られており、この評価機関で継続的に最高評価を獲得していることは、カサーレヴェッキオの品質の高さを示す重要な指標となっています。また、2022年には「フランクフルト インターナショナル ワイン トロフィー」や「ムンドゥス ヴィーニ」でも『BEST ITALIAN PRODUCER』に選ばれており、国際的にも高い評価を獲得しています。
カサーレヴェッキオ自体も各ヴィンテージで高い評価を獲得しており、2014年ヴィンテージは「Mundus vini International Wine Award」で金賞を受賞、2008年ヴィンテージは「デカンター2009.10」で銅賞、「ルカ マローニ ベストワイン年鑑2010」で91点、「イ ヴィーニ ディ ヴェロネッリ2010」で2ッ星90点を獲得するなど、継続的に高い評価を得ています。これらの受賞歴により、カサーレヴェッキオは国際的なワイン市場でも認知されており、継続的な高評価を獲得しています。
神の雫での絶賛とシンガポール・ラッフルズホテルの表現
カサーレヴェッキオが日本で爆発的な人気を獲得したきっかけは、人気漫画「神の雫」第19巻での紹介でした。作中では「イタリアのモン・ペラ」として紹介され、16000円クラスの高級ワインを圧倒する味わいとして絶賛されています。主人公の神咲雫は「この値段で買えるなんて、奇跡のようなワインなんですから」と表現し、多くのワイン愛好家がこのワインを求めるようになりました。
作中での表現は非常に詩的で、「たくさんの蘭の花、そして溢れる香り。情熱的で肉感的な蘭の匂いとエレガントな内装や調度品。シンガポールの濃い夜の闇に幻想的にたたずむ白いラッフルズホテル。このワインは、あの古いホテルを訪れた刹那の忘れがたい思い出と重なる」と表現されており、このワインの複雑で印象的な味わいが巧みに描写されています。
漫画で取り上げられた2006年ヴィンテージは瞬く間に完売となり、それ以降も継続的に高い人気を維持しています。カルディコーヒーファームなどの量販店でも取り扱われるようになり、ワイン初心者から上級者まで幅広い層に愛飲されています。漫画での紹介以降、日本では継続的に高い人気を維持しており、多くのワインショップや量販店で定番商品として取り扱われています。
ワイン専門サイトでの高評価と当たり年情報
ワイン専門サイトVivino(ヴィヴィーノ)において、カサーレヴェッキオは非常に高い評価を獲得しています。特に2017年、2018年、2019年が優秀な当たり年とされており、2017年は6000件を超える評価で高得点を記録しています。これらの年のワインは、濃厚な果実味と樽香のバランスが特に優れており、多くのワイン愛好家から絶賛されています。
ただし、カサーレヴェッキオは若いうちから美味しく飲めるように設計されているため、ヴィンテージによる品質差は比較的小さく、どの年代でも安定した満足度を得られることが特徴です。若木から収穫されたフレッシュで力強い果実だけを使用し、果実味を活かす熟成控えめなモダン醸造により、「開けてすぐ美味しい」を目指した設計思想で造られています。
現在の価格帯は2000円台から3000円台前半で、Amazon、楽天市場、専門酒販店、カルディなどで購入可能です。人気が高いため品切れすることも多く、特に2015年より前のバックヴィンテージは流通量が極めて少なくなっています。購入を検討される場合は、在庫があるうちに入手することをおすすめします。

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まとめ:なぜカサーレヴェッキオは愛され続けるのか
カサーレヴェッキオが「奇跡のワイン」として多くのワイン愛好家に愛され続ける理由は、単なる価格の安さではありません。アブルッツォ州の理想的なテロワール、徹底した収量制限による濃縮製法、フレンチオーク新樽熟成、そして13名の醸造家チームによる品質管理体制が、2000円台という価格でありながら高級ワインに匹敵する味わいを実現しています。
神の雫で紹介されて以来、日本のワイン愛好家に愛され続け、国際的にも高い評価を獲得していることは、その真の価値を証明しています。ルカ・マローニで9度の最優秀生産者受賞、各種国際ワインコンペティションでの受賞歴、そしてワイン専門サイトでの継続的な高評価は、一時的なブームではない確固たる品質の証拠といえるでしょう。
モンテプルチアーノ種の豊かな果実味とオーク樽熟成による複雑な味わいは、ワイン初心者から上級者まで幅広く楽しめる魅力を持っています。フルボディでありながら親しみやすく、肉料理からチーズ、トマト系料理まで幅広いペアリングが可能で、デイリーワインとしても特別な日のワインとしても活躍する万能性も大きな魅力です。
カサーレヴェッキオは、イタリアワインの魅力を多くの人に伝える架け橋的存在として、今後も多くのワイン愛好家に愛され続けていくことでしょう。コストパフォーマンスの高さと安定した品質で、ワインの楽しさを率直に教えてくれる、まさに「奇跡のワイン」なのです。

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カサーレヴェッキオに関するよくある質問
Q1:カサーレヴェッキオの当たり年はいつですか?どのヴィンテージを選べばよいでしょうか?
A1:ワイン専門サイトVivino(ヴィヴィーノ)での評価によると、2017年、2018年、2019年が特に高い評価を得ており、当たり年とされています。特に2017年は6000件を超える評価で高得点を記録しています。ただし、カサーレヴェッキオは若いうちから美味しく飲めるように設計されているため、ヴィンテージにかかわらず安定した品質を保っています。現行ヴィンテージでも十分に満足できる品質なので、入手しやすい年代を選んで問題ありません。
Q2:カサーレヴェッキオに合う料理を教えてください。どんなペアリングがおすすめですか?
A2:フルボディの濃厚な味わいのため、肉料理全般によく合います。特に牛肉の煮込み、豚の角煮、ローストビーフ、ステーキなどの赤身肉料理がおすすめです。また、熟成チーズ、トマトベースのパスタ、ピザ、生ハムとの相性も抜群です。神の雫マリアージュでは豚の角煮との組み合わせが紹介されており、まろやかな酸味が広がり双方の味わいを高め合うとされています。濃厚な味わいのため、基本的には単体で楽しむのも魅力的なワインです。
Q3:カサーレヴェッキオの正しい保存方法と美味しく飲むためのコツを教えてください。
A3:開栓前は冷暗所で横に寝かせて保存し、振動や温度変化を避けてください。開栓後は冷蔵庫で保存して2〜3日以内にお飲みください。飲み頃温度は16〜18℃が最適で、少し冷やして飲むことで果実味とタンニンのバランスが美しく表現されます。デキャンタージュを行うとより香りが開き、味わいが豊かになるためおすすめです。また、開栓から1〜2時間程度置くことで、より一層味わいが開いてきます。
Q4:カサーレヴェッキオはどこで購入できますか?価格相場はどのくらいですか?
A4:Amazon、楽天市場、カルディコーヒーファーム、イオン、成城石井などの量販店、専門酒販店(稲葉酒店、エノテカなど)で購入可能です。価格は2000円台から3000円台前半が相場となっています。人気が高いため品切れすることも多く、特に2015年より前のバックヴィンテージは流通量が少なくプレミアム価格となる場合があります。安定して購入したい場合は、複数の販売店をチェックするか、入荷情報を事前に確認することをおすすめします。
Q5:カサーレヴェッキオと似た味わいのワインはありますか?同じ生産者の他のワインも知りたいです。
A5:同じ生産者ファンティーニ(旧ファルネーゼ)では、「エディツィオーネ チンクエ アウトークトニ」がフラッグシップワインとして知られており、5つの土着品種をブレンドしたより複雑な味わいを楽しめます。また、「イル パッソ」「ピポリ」なども人気銘柄です。他の生産者では、ウマニ・ロンキの「ビアンキ・モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」、マシャレッリの「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」なども同様にコストパフォーマンスが高く、モンテプルチアーノ種の魅力を楽しめるワインとしておすすめです。
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