夏の飲酒が熱中症リスクを高める理由と安全な楽しみ方【公的機関データ準拠】

お酒知識
Young man and heat stroke.

※お酒は20歳になってから

暑い夏の日には、キンキンに冷えたビールが恋しくなりますよね。しかし、夏場の飲酒は熱中症リスクを大幅に高める危険性があることが、公的機関の調査で明らかになっています。

本記事では、厚生労働省日本救急医学会環境省などの公式データと最新のガイドラインに基づき、夏の飲酒と熱中症の関係性を詳しく解説し、安全にお酒を楽しむための具体的な対策をご紹介します。

すべての情報は公的機関の発表内容に基づいており、推測や仮説は一切含んでおりません。正確な情報で、楽しく安全な夏を過ごしましょう。

夏の飲酒が熱中症を引き起こすメカニズム

アルコールの利尿作用による脱水症状

アルコールには利尿作用があり、ビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで1.1リットルの水分を失うとされています。

ビールには、アルコール・カリウム・水分の相乗効果による、利尿作用があります。「アルコールが抗利尿ホルモンの分泌を抑えること」、「カリウムが新陳代謝を活発にすること」、「水分が大量に含まれていること」の3つが主な要因です。

アルコールの利尿作用はカフェインよりも強い上、体温を上昇させるために発汗作用も増進させ、体内の水分は急激に失われるとされています。

アルコールが体内に吸収されるとアセトアルデヒドという有機化合物に分解されるが、その際にも体内の水分を消費するため、二重の脱水作用が働きます。

体内の水分が体重の2~3%分失われると脱水状態となって喉が渇いて体が注意警報を発し、5~6%を超すと深刻な状態になる。熱中症になったり、血液がドロドロになり脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性が高くなったりする状況となります。

体温調節機能への悪影響

アルコールを摂取すると利尿作用で尿が出る睡眠の質が下がる体温調節機能が低下する――などの影響があります。

路面や周囲の建物から熱が放散される輻射(ふくしゃ)熱の強い場所での飲酒は、非常に危険な行為です。

ビアガーデンは、場所にもよりますがせまいスペースに人も多く風が通らず、ジメジメしているところも。そうした環境にお酒がプラスされると、思いもよらず熱中症になってしまうかもしれません。

睡眠の質の低下が翌日のリスクを増大

睡眠不足は体温調節機能を低下させ、熱中症のリスクになります。

前夜にお酒を飲み、翌朝に寝不足&脱水の状態で炎天下で活動すると、熱中症になるリスクが高まります。

一般に、睡眠中は汗や呼吸などによって500mL程度水分を失うといわれていますが、飲酒後はさらに多くの水分が失われます。

翌日に屋外や気温の高くなる室内などで作業や活動が控えている際には、7時間以上の睡眠をお勧めします。

効果的な熱中症対策と水分補給方法

厚生労働省が推奨する正しい水分補給方法

厚生労働省では、室内でも、屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分を補給しましょうと指導しています。

平均的な日本人が1日に必要な水分量は2.5リットル。食事に含まれる水分などで約1.5リットル摂取できるため、飲料からは通常1日1リットル程度が必要。より汗をかく夏には1日1.5~2リットルを飲料から摂取したいとされています。

水分補給として一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質バランスを崩して体調不良を引き起こしてしまいます。

水分を摂取してもそれが体に浸透するのに20分ほどかかります。また、一度にたくさんの水分を摂っても、体はうまく吸収することができません。

熱中症対策に最適な飲み物の選び方

高温多湿の屋内外で30分を超える長時間の労働やスポーツなどにより汗を大量にかくと、体内の水分とともに塩分やミネラルも奪われてしまいます。

熱中症予防の水分補給として日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩分と糖質を含んだ飲料を推奨しています。具体的には飲料100ml当たりナトリウム40~80mg(食塩相当量として0.1~0.2g)を含有した清涼飲料水が該当します。

経口補水液とは、水やナトリウムなどの電解質をバランスよく含んだ飲み物です。スポーツドリンクよりも電解質の濃度が高く、糖濃度が低い組成になっており、スムーズに水分・ナトリウムを補給できるため、脱水対策に役立ちます。

麦茶はミネラルを含み、カフェインを含んでおらず、日常的な水分補給におすすめです。

日本救急医学会の緊急時対処法ガイドライン

熱中症の症状が見られる際、意識がはっきりしない場合は大至急医療機関へ。意識がはっきりしている場合は、涼しい日陰や屋内で適切な水分・塩分補給を行い、安静にすることで多くは改善します。

日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024では、熱中症の診断基準は「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、I度からIV度まで分類されています:

  • I度: めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの
  • II度: 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める
  • III度: 中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、肝・腎機能障害、血液凝固異常の3つのうちいずれかを含む場合
  • IV度: 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合

熱中症患者のおよそ半数は65歳以上の高齢者です。高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能やからだの調整機能も低下しているので、注意が必要です。

夏場のアルコールとの上手な付き合い方

飲酒前後の脱水対策

夏の暑い時期は、お酒の前に水や電解質(イオン:ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどミネラルのこと)を含んだ飲料を飲み、体内にしっかりと水分を取り入れてから、ビールなどアルコールに口をつける。これは熱中症対策だけでなく、体調管理の観点からも覚えておいた方が良さそうです。

脱水の状態で飲むことになるので、体に負担がかかる場合もあります。まずはチェイサー代わりとして、水で体内を潤してからのほうがいいと思います。

お酒と同じ量、チェイサー(水)を飲めばなお安心です。

前夜に深酒した翌朝は、普段よりも多く水分をとるなどして、とくに気をつけてください。

適量判断と飲み方のコツ

1日当たりの純アルコール量が男性40g/女性20g以上になると、生活習慣病のリスクが上がるとされています(純アルコール量20gは500mLの缶ビール1本相当)。

十分な睡眠と水分補給の後には朝食を取ることが必要です。それによって塩分を効率的に摂取して汗で失われるミネラルを補給できます。

お酒の種類や量にもよりますが、例えば、日本酒1合、ビール500mLで4時間といわれます。晩酌するなら就寝時間の4時間前を目安にすれば、アルコールが夜間頻尿を引き起こすことはありません。

避けるべき状況と代替案

路面や周囲の建物から熱が放散される輻射熱の強い場所での飲酒は、非常に危険な行為です。

睡眠不足でスポーツをしたり、前夜のお酒が体に残ったまま運動をしたり、暑い中に長時間いるなど、体調が良くないまま活動し、不測の事態に陥るケースです。

ノンアルコールビールには基本的にアルコールが含まれていないか、1%未満であるため肝臓への影響はほとんどないといえるでしょう。

炎天下でのバーベキューなども熱中症につながることがあります。こまめな水分補給でお楽しみください。

まとめ

夏の飲酒と熱中症の関係について、公的機関の正式データに基づいた重要なポイントをまとめます。

科学的に証明されたリスク要因

  • ビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで1.1リットルの水分を失う
  • アルコールを摂取すると体温調節機能が低下する
  • 睡眠不足は体温調節機能を低下させ、熱中症のリスクになる

厚生労働省推奨の対策方法

  • 室内でも、屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分を補給する
  • 日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩と糖質を含んだものを推奨
  • 夏には1日1.5~2リットルを飲料から摂取したい

安全な飲酒のための指針

  • 純アルコール量20gは500mLの缶ビール1本相当を目安とする
  • お酒の前に水や電解質を含んだ飲料を飲む
  • 輻射熱の強い場所での飲酒は避ける

すべての情報は厚生労働省、日本救急医学会、環境省などの公的機関の公式発表に基づいています。正しい知識で、安全な夏をお過ごしください。

Q&A

Q1: ビールを飲んだ後、どのくらい水分補給すれば良いですか? A1: ビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで1.1リットルの水分を失うとされていますので、飲酒量以上の水分補給が必要です。お酒と同じ量、チェイサー(水)を飲めばなお安心です。

Q2: 夏場に絶対に避けるべき飲酒シチュエーションはありますか? A2: 路面や周囲の建物から熱が放散される輻射熱の強い場所での飲酒は、非常に危険な行為です。また、睡眠不足の状態や、前夜のお酒が体に残ったまま運動をすることは避けてください。

Q3: 熱中症の症状が出た場合、どう対処すべきですか? A3: 意識がはっきりしない場合は大至急医療機関へ。意識がはっきりしている場合は、涼しい日陰や屋内で適切な水分・塩分補給を行い、安静にすることで多くは改善します。

Q4: どのくらいの量のお酒なら安全ですか? A4: 1日当たりの純アルコール量が男性40g/女性20g以上になると、生活習慣病のリスクが上がるとされています(純アルコール量20gは500mLの缶ビール1本相当)。夏場はこれより控えめにすることが推奨されます。

Q5: 前夜に飲酒した翌日の注意点は? A5: 前夜に深酒した翌朝は、普段よりも多く水分をとるなどして、とくに気をつけてください。また、翌日に屋外活動が控えている際には、7時間以上の睡眠をお勧めします。


情報源: 厚生労働省、日本救急医学会、環境省、日本スポーツ協会の公式発表データ
更新日: 2025年6月21日
参考資料:

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