※お酒は20歳になってから
2025年夏のお酒業界に、とても興味深い変化が起きているんです。最近「お酒は飲めるけど、積極的には飲まない」という人が増えていることをご存知ですか?これを「ソバーキュリアス」と呼んでいます。
調査会社の矢野経済研究所によると、お酒の市場全体は3兆2,350億円と、なんと9年ぶりに大きくなりました。特に注目したいのが、缶を開けてすぐ飲めるお酒「RTD」の人気です。この市場は13年間ずっと成長を続け、10年前と比べて2.5倍もの大きさになっているんです。
今回は、2025年夏のお酒トレンドについて、まるで授業のように分かりやすくお話しします。なぜこんな変化が起きているのか、どんな新商品が登場しているのか、一緒に見ていきましょう。

RTD市場の急拡大と低アルコールブームの実態

最近よく聞く「RTD」って何でしょうか?そして、なぜみんな低アルコールのお酒を選ぶようになったのでしょうか?「RTDってどんなお酒?」「低アルコールが人気の理由」「2025年夏の注目新商品」をそれぞれ見ていきましょう。
RTDってどんなお酒?市場が大きくなっている理由
RTDとは「Ready to Drink」の略で、缶や瓶を開けてすぐに飲めるお酒のことです。レモンサワーやチューハイがその代表例ですね。
業界の専門誌「日本食糧新聞」によると、RTD市場は2024年も成長を続けていて、特に「砂糖を使わないRTD」が去年より17%も多く売れているそうです。これはすごい伸び率ですよね!
なぜこんなに人気になったのでしょうか?大きな理由は3つあります。まず、コロナ禍で「家飲み」が増えたこと。電車の時間や帰り道を気にせず、自宅でゆっくり飲めるようになりました。
次に、2023年10月にお酒の税金が変わったこと。ビールとRTDの値段の差が小さくなって、RTDを選びやすくなったんです。
そして最後に、みんなの健康への意識が高まったこと。「お酒は楽しみたいけど、体のことも考えたい」という人が増えているんですね。
実際のデータを見てみましょう。サントリーの調査では、RTD市場は2021年に2億7,451万ケース売れました(前年より7%増加)。そのうち、レモン味だけで1億4,475万ケース(前年より17%増加)も売れているんです。つまり、RTDの半分以上がレモン味ということになります。
なぜ低アルコールが選ばれるの?消費者の本音
「低アルコールのお酒を選ぶ」と答えた人が55.2%もいることが、インテージという調査会社の研究で分かりました。前年は51.4%だったので、確実に増えているんです。
では、なぜ低アルコールを選ぶのでしょうか?理由を聞いてみると、興味深い結果が出ました。
1位「飲みやすくて気軽に飲める」(77.5%)
2位「味の種類がたくさんあって選べる」(62.3%)
3位「のんびりリラックスできる」(58.4%)
4位「ゆっくり心地よい気分になれる」(54.1%)
5位「体のことを考えられる」(43.7%)
つまり、「酔っ払うため」ではなく「楽しむため」「リラックスするため」にお酒を飲む人が増えているということですね。これは大きな変化だと思います。
特に40代の人たちで低アルコール志向が強くなっているのも特徴です。仕事や家庭で忙しい世代が、「お酒は楽しみたいけど、翌日に響かないようにしたい」と考えているのかもしれません。
2025年夏に注目したい新商品
この夏、面白い新商品がいくつか登場しています。まず注目したいのが、サントリーの「金麦〈晩酌サワー〉」です。4月8日から全国で発売されました。
この商品の特徴は、ビールの技術で作られているのに、サワーのように爽やかで飲みやすいこと。そして、香料や甘味料を一切使っていない点です。「体に優しいお酒を飲みたい」という声に応えた商品ですね。
もう一つ面白いのが、ISEKADOの「SAKEKASU Hard Seltzer 作」(1月18日発売)。これは日本酒の酒粕を使ったお酒で、炭酸が強めで低アルコール。日本の伝統とアメリカで人気のハードセルツァーを組み合わせた、まったく新しいタイプのお酒です。
これらの商品に共通しているのは、「今までにない新しい体験」を提供していることです。単に「安い」「酔える」ではなく、「どんな気分になれるか」「どんな体験ができるか」を大切にしているんですね。
ノンアルコール・微アルコール市場の革新的展開

「お酒の代わり」から「それ自体が楽しい飲み物」へと変わってきているノンアルコール飲料について学んでみましょう。「ノンアルコール飲料の新しい立ち位置」「微アルコール飲料って何?」「健康志向の人たちの行動パターン」をそれぞれ確認していきます。
ノンアルコール飲料の新しい立ち位置
ノンアルコール飲料を飲む理由が大きく変わってきているんです。以前は「車を運転するから」「お酒を飲んだ気分になりたいから」が主な理由でした。
でも最近の調査では「リフレッシュしたいから」「気分転換したいから」という理由が1位になっています。これってとても大きな変化なんです。
つまり、ノンアルコール飲料は「お酒の代わり」から「それ自体が魅力的な飲み物」に変わったということです。
CCCMKホールディングスの調査でも面白い結果が出ています。ノンアルコール飲料に対するイメージで、「食事を楽しむために飲むもの」「気分転換をサポートしてくれるもの」という答えが、「お酒の代わりにやむを得ず飲むもの」を大きく上回っているんです。
つまり、もうノンアルコール飲料は「我慢して飲むもの」ではなく、「積極的に選ぶもの」になったということですね。
市場の規模も大きくなっています。矢野経済研究所によると、2022年にノンアルコールビールの売上が一時的に下がりましたが、これは2021年に大きく伸びた反動で、基本的には成長を続けているそうです。
微アルコール飲料って何?ハードセルツァーも登場
「微アルコール」という新しいカテゴリーをご存知ですか?これは、アルコール度数が0.5%程度の飲み物のことです。
法律上は1%以上がアルコール飲料なので、0.5%の微アルコールは「ノンアルコール」に分類されます。でも、ほんのわずかにアルコールの風味があるんです。
代表的な商品がアサヒビールの「ビアリー」です。2021年3月に発売されて、同年前期のビールテイスト飲料の売上を約20%も押し上げました。すごい効果ですよね!
もう一つ注目したいのが「ハードセルツァー」です。これはアメリカで大人気の、炭酸水ベースの低アルコール飲料。日本でも本格的に販売が始まっています。
特に健康を気にする若い人やフィットネス好きの人から支持されています。今までの酒類では捕まえられなかった新しいお客さんを獲得しているんです。
業界の専門家によると、微アルコール・ハードセルツァー市場は2025年から2027年にかけて、毎年30%以上成長すると予想されています。これは投資先としても注目されているんです。
健康志向の人たちはどんな行動をしている?
ノンアルコール飲料を好む人たちには、はっきりとした特徴があることが分かっています。
ノンアルコールビールをよく飲む人は、普通のビールを飲む人と比べて:
- 健康志向が強い
- オーガニック食品が好き
- 国産の食材や野菜を選ぶ
といった特徴があります。つまり、食生活全体で健康を意識している人たちなんですね。
買い物の行動を見ても面白いことが分かります。ノンアルコール飲料をよく買う人は:
- 低カロリーの甘味料をよく買う
- ベビー用品(赤ちゃんのミルクなど)をよく買う
つまり、健康管理をしっかりしていて、育児中の人が多いということです。この発見は、商品を作る会社にとってとても大切な情報なんです。
ノンアルコールのRTD(缶チューハイなど)を好む人は、さらに特徴的です:
- 干ししいたけ、煮干しなどの天然食材をよく買う
- 手作り料理の材料をよく買う
つまり、添加物を避けて、自然な食生活を心がけている人たちということですね。
これらの行動パターンを見ると、ノンアルコール市場では「プレミアム商品」や「オーガニック商品」が売れる可能性が高いということが分かります。メーカーにとっては、高品質な商品作りのヒントになりますね。
プレミアム化と多様化が進む日本酒・ワイン市場

最近のお酒業界では「高品質で特別感のある商品」が注目されています。その理由を知るために、「日本酒が世界で認められるようになった話」「なぜ高級なお酒が人気なの?」「昭和・平成レトロブームの影響」をそれぞれ確認していきましょう。
日本酒が世界で認められるようになった話
2025年4月9日、東京の秋葉原で「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2025」の表彰式が行われました。なんと39の酒蔵が最高金賞を受賞したんです!
「ワイングラスで日本酒?」と思うかもしれませんね。実は、ワイングラスで日本酒を飲むと、今まで気づかなかった香りや味わいを発見できるんです。おちょこでは感じられない繊細な香りまで楽しめるようになります。
成功している酒蔵には共通点があります:
- アルコール度数を下げている:従来の13%から5%まで下げた日本酒を作っている
- パッケージを現代風にしている:若い人にも手に取ってもらえるデザイン
- 体験を大切にしている:酒蔵見学や試飲会を開催
- 国際的な名前をつける:海外でも覚えやすい商品名
これらは「伝統を守りながら、現代に合わせて変化する」という戦略ですね。
実際、日本酒の海外への輸出も順調に伸びています。特にアメリカやヨーロッパで、高価格の日本酒が人気なんです。これは日本国内でも「高品質な日本酒」の需要が高まっている証拠でもあります。
なぜ高級なお酒が人気なの?
お酒の市場全体が小さくなってきている中で、生き残るためには「特別感」「非日常の体験」を提供することが大切になっています。
簡単に言うと、「たくさん飲む」から「良いものを少し飲む」へと変わってきているんです。これにより、お酒1本あたりの値段を上げて、利益を確保する戦略が重要になっています。
面白い例をご紹介しましょう。サンクトガーレンというメーカーが作った「el Diablo 2024」と「Un angel 2024」という商品です(2024年11月21日発売、各6000本限定)。
この商品の特徴は:
- 麦芽を通常の3倍使用
- アルコール度数10%(通常のビールの約2倍)
- 限定6000本のみ
- 「麦のワイン」と呼ばれる新ジャンル
まさに「プレミアム商品」の見本ですね。限定性、特別な製法、高品質という要素を組み合わせて、特別感を演出しています。
クラフトビール、高級ウイスキー、プレミアム日本酒の成功要因は似ています:
- 希少な原料を使う
- 複雑で手間のかかる製法
- 商品にまつわるストーリー
- 限定性
これらの要素で「特別感」を作り出しているんです。
昭和・平成レトロブームの影響
2024年に「昭和・平成レトロブーム」という文化現象が起きました。1980年代~1990年代の懐かしいものが人気になっているんです。
このブームの背景には:
- SNSでの「映える」写真への意識
- コロナ禍で内向きになった心理
- バブル時代への憧れ
といった要因があります。
お酒業界でもこの影響が見られます:
- 昔ながらのパッケージデザインの復活
- 古民家を改装した居酒屋の人気
- 昭和をテーマにしたキャンペーン
特に40代~50代の人たちが、自分の若い頃を思い出すような商品に反応しています。これは「ノスタルジア(懐かしさ)マーケティング」と呼ばれる手法です。
面白いのは、このレトロブームと高品質化が同時に起きていることです。「懐かしいけれど、品質は現代レベル」という商品が人気なんです。
例えば:
- 昭和風のラベルデザインだけど、中身は最新技術で作られた日本酒
- レトロな居酒屋だけど、厳選された高品質な食材を使用
- 昔懐かしいCMソングを使いながら、健康志向の新商品をPR
このように、「懐かしさ」と「高品質」を両立させることで、消費者の心を掴んでいるんですね。
まとめ
2025年夏のお酒業界は、「健康」「体験」「高品質」という3つのキーワードで大きく変わってきています。「たくさん飲む」時代から「良いものを楽しむ」時代への変化が起きているんです。
市場の数字で見ると、RTD市場は毎年9%ずつ成長していて、2029年には357億ドル(約5兆円)の大きな市場になると予想されています。特に低アルコール・ノンアルコール飲料の人気が成長を支えています。
この変化の背景には:
- 健康への意識の高まり
- 「意識的に飲酒をコントロールする」考え方の広がり
- 「お酒を飲まない社交」を好む文化の変化
があります。
成功している会社の特徴を見ると、次の3つのことを大切にしています:
- 機能と気持ちの両方に配慮:飲みやすさ・味の多様性(機能)と、リラックス・健康配慮(気持ち)の両方を満たす
- ストーリーと体験を重視:商品にまつわる物語や、飲む時の体験を大切にする
- 新しいカテゴリーに挑戦:従来の枠を超えた商品開発
インテージの調査によると、若い人の「お酒離れ」は、実は「お酒を楽しむ方法の多様化」なんです。「みんなで同じものを飲む」から「それぞれが好きなものを選ぶ」へと変わっているんですね。
2030年の展望として、食品・飲料・お酒の市場全体は約10%小さくなると予想されています。この中で生き残り、成長するためには「大量消費モデル」から「一人ひとりに合わせた高品質体験モデル」への変化が必要です。
2025年夏は、この大きな変化が本格的に始まる重要な時期として、業界の人たちや投資家から注目されているんです。
簡単に言うと、これからのお酒業界は「みんなでたくさん飲む」時代から「一人ひとりが自分に合った良いものを選んで楽しむ」時代になっていくということですね。
Q&A
Q1: 2025年夏のお酒で、一番注目すべき市場はどこですか?
A1: RTD(缶を開けてすぐ飲めるお酒)市場が最も注目されています。毎年9%ずつ成長していて、2029年には約5兆円の大きな市場になると予想されています。特に砂糖を使わないRTDは去年より17%も多く売れていて、健康を気にする人たちに人気です。
Q2: なぜ低アルコールのお酒を選ぶ人が増えているんですか?
A2: 理由は大きく2つあります。まず「飲みやすさ」(77.5%の人が回答)や「リラックス効果」(58.4%の人が回答)を重視する人が増えています。特に40代の人たちで低アルコールを選ぶ人が増えていて(55.2%)、「お酒は楽しみたいけど、健康も大切にしたい」という考え方が広がっているんです。
Q3: ノンアルコール飲料の人気の理由は何ですか?
A3: 「お酒の代わり」から「それ自体が魅力的な飲み物」に変わったことが大きいです。飲む理由の1位が「リフレッシュ・気分転換」になっていて、もう「我慢して飲むもの」ではなく「積極的に選ぶもの」になっています。健康志向の人や育児中の人に特に人気です。
Q4: なぜ高級なお酒が人気になっているんですか?
A4: お酒の市場全体が小さくなってきているので、「たくさん売る」から「良いものを高く売る」戦略に変わっているんです。成功の秘訣は①希少な原料や特別な製法、②商品にまつわるストーリー、③限定性の3つです。サンクトガーレンの「麦のワイン」(6000本限定)などは、これらをうまく使った成功例ですね。
Q5: 2025年4月からお酒が値上げされるそうですが、影響はありますか?
A5: 短期的には飲む量が減るかもしれませんが、RTD・低アルコール市場の成長は続くと予想されています。なぜなら、値段よりも「健康に良い」「体験が楽しい」ということを重視する人が増えているからです。適切な価値を提供できれば、少し高くても選んでもらえる市場になっているんです。