新潟の伝統×若き革新──注目の日本酒ブランド『あべ』が紡ぐ新時代の味わい

お酒知識

※お酒は20歳になってから

はじめに

日本酒の世界には、全国各地で個性豊かな銘柄が存在します。その中でも近年、特に注目を集めているのが新潟県の小規模な酒蔵が醸す「新世代の日本酒」です。新潟といえば「淡麗辛口」のイメージが強い地域ですが、若い世代の蔵人たちが試行錯誤を重ねることで、従来の枠にとらわれない味わいの新しい日本酒が次々と生まれています。

その代表例として注目されているのが、阿部酒造が手がけるブランド「あべ」。酒造りに対する若き当主の情熱や、地元の米と水を活かした丁寧な醸造、そして新しい感性を取り入れた味わいで、多くの日本酒ファンを魅了しています。本ブログでは、そんな「あべ」の魅力を存分に語り尽くし、その背景や特徴、楽しみ方などを深く掘り下げていきます。


「あべ」を生み出す阿部酒造の歴史と背景

創業の歴史

新潟県柏崎市にある阿部酒造は、江戸時代後期(約200年以上前)に創業したとされる老舗酒蔵です。新潟県内には数多くの酒蔵が点在していますが、阿部酒造はその中でも比較的規模の小さい家族経営の酒蔵として知られています。

創業当初は地元向けの酒造りが中心でしたが、時代の移り変わりとともに大手酒造メーカーとの競合や、消費者の嗜好の変化に対応する必要が生じました。しかし、阿部酒造は自分たちの蔵の「小ささ」を逆手にとり、家族経営だからこそ実現できる丁寧な仕込みや、蔵人同士の密なコミュニケーションを活かして独自の酒造りを続けてきました。

現代の当主と若い蔵人たち

阿部酒造を語る上で外せないのが、現代の若き当主である阿部 裕太氏(名前は文献や時期によって変わる可能性がありますが、仮にそう呼びます)。大学で醸造や経営を学んだのち、一度は外の世界で経験を積み、実家である阿部酒造に戻って蔵の改革を進めました。

若き当主が掲げるテーマは「伝統に新しい解釈を加える」こと。新潟という土地が育んだ酒造りの知恵を大切に守りつつ、最新の技術や情報を積極的に取り入れ、より幅広い層の人々に愛される日本酒を目指しています。そんな情熱や意志に共感した若い蔵人たちが集い、「新世代の新潟酒」を発信し続けているのです。


「あべ」のブランドコンセプト

「あべ」の誕生

阿部酒造は長年、「越乃男酒」「米百俵」「N-40」など、複数の銘柄を醸してきました。その中でも、「あべ」は特に若い蔵人たちの感性を前面に打ち出したブランドとして位置づけられています。もともとは地元向けの限定流通商品として企画されていましたが、その優れた品質と斬新なデザイン、そしてSNSなどを通じた口コミ効果によって全国的な知名度を急速に高めました。

ブランド名である「あべ」は、蔵の苗字である「阿部」にちなんでいます。極めてシンプルかつ親しみやすいネーミングにより、初めて手に取る人にも「なんだか気になる存在」として印象づける効果があります。さらに英字表記にしても「Abe」であり、海外の方にもわかりやすいというメリットがあります。

ラベルデザインの特徴

「あべ」の特徴の一つに、大胆かつシンプルなラベルデザインが挙げられます。一般的な日本酒のラベルと比べると、漢字を多用した雅やかな書体ではなく、モダンでスタイリッシュなデザインが目を引きます。余白を生かした洗練されたグラフィックのラベルは、和洋問わず多様な食卓にマッチしやすい点でも魅力的です。これも、「日本酒をもっとカジュアルに楽しんでほしい」という蔵の思いが形になったものです。


使用する米・水・酵母へのこだわり

米のこだわり

新潟県は全国有数の米どころとして知られています。「あべ」では地元の契約農家と協力し、五百万石越淡麗など新潟県を代表する酒造好適米を積極的に用いています。さらに一部の限定商品では、山田錦雄町といった他県の銘柄米を取り寄せ、ブレンドや単一米仕込みを試みることで、独特の香味を引き出しています。

大切にしているのは米の品質だけでなく、農家との密なコミュニケーションです。土壌や栽培環境への配慮、収穫時期の見極めなど、生産者と蔵が一体となって「最高の酒造り」を目指すことで、結果的に高いクオリティの酒が生まれるのです。

水のこだわり

新潟県は降雪量が多く、雪解け水が豊富な地域でもあります。柏崎市周辺は軟水寄りの水質を得られるエリアであり、これが「淡麗」でキレの良い酒質を生む一因となっています。しかし「あべ」は、従来の「新潟酒=淡麗辛口」のイメージにとどまらない、香りや旨みをしっかりと感じられる味わいを目指しているため、水の使い方にもこだわりがあると言われています。

仕込み水や洗米の段階で使用する水の温度や硬度など、細やかなコントロールを行うことで、米の甘みや旨みを引き出しつつ、後味のキレも保つ。伝統的な新潟酒の「軽やかさ」と、新世代の日本酒が持つ「フレッシュな旨み」の両立を実現しているのが「あべ」の特徴です。

酵母の工夫

「あべ」では、蔵内で培養した酵母だけでなく、協会系酵母県独自の酵母、さらには蔵元独自に分離・開発した酵母を組み合わせることで、多彩な香味を創出しています。酵母によっても日本酒の香りや味わい、酸の出方は大きく変わるため、試行錯誤の結果生まれた絶妙なバランスが「あべ」の持ち味となっています。

とりわけ注目されるのは、フルーティな香り爽やかな酸味をもたらす酵母の採用です。新潟の日本酒には珍しく、白ワインを思わせるような爽快な香りや、青りんごやメロンのようなニュアンスを備えたタイプもラインナップに揃えています。これが、若い世代や海外の日本酒ファンに高く評価される理由の一つです。


「あべ」の味わい・ラインナップ

味わいの傾向

一口に「あべ」といっても、商品ごとに目指す味わいやコンセプトは異なります。しかし共通するポイントは、米の旨みをしっかり感じながらも、後味は軽快であること。口に含んだ瞬間は甘みやコクがあり、その後キレの良い酸が全体を引き締めるため、飲み飽きしないバランスに仕上がっています。

また、香りの方向性も多種多様です。華やかな吟醸香をメインに打ち出す商品もあれば、米の旨み重視で香りは控えめながらもふくよかなタイプもあります。これは蔵が敢えて多彩なチャレンジを続けている証拠ともいえます。

代表的な商品例

  • あべ 純米吟醸 五百万石
    新潟県産五百万石を使用した純米吟醸。五百万石らしい淡麗でクリアな味わいをベースとしながらも、ほどよく果実感のある香りと、ふくらみのある旨みが特徴です。冷酒で楽しむと、キレの良さと軽快な酸が際立ちます。
  • あべ 純米吟醸 越淡麗
    越淡麗は新潟県が生み出した酒造好適米で、華やかな香りと繊細な味わいが両立しやすいのが持ち味。「あべ 純米吟醸 越淡麗」は、吟醸香が比較的しっかり立ち上るため、香り重視派にもおすすめ。口当たりは柔らかく、すっきりした余韻が心地よいです。
  • あべ 純米大吟醸
    米を35〜40%程度まで磨き上げ、繊細さと上品さを追求した高級ライン。香りはメロンや洋ナシを思わせる甘くエレガントな印象があり、口に含むと透明感のある旨みが広がります。特別な日の乾杯酒としても使いたい一品です。
  • 限定醸造シリーズ
    阿部酒造では季節や企画ごとに限定醸造酒をリリースすることがあります。初搾り生酒や、特定の農家が育てた限定米の仕込みなど、ファンには見逃せないラインナップが登場することも。こうした限定品では、新しい酵母のテストや製造工程のマイナーチェンジを試みることが多く、「あべ」の革新性を感じられる機会にもなっています。

仕込みから瓶詰めまでの製造工程

小仕込みのメリット

規模の大きな酒蔵では、一度に大量の仕込みを行うため、ある程度の均一化が進む傾向にあります。一方、阿部酒造のように家族経営で小規模な蔵の場合は、小仕込みならではのメリットがあります。タンクごとの温度管理や酵母の状態を細かくチェックし、必要に応じて迅速に調整ができるのです。

これにより、各タンクごとにベストな発酵環境を整えられ、味わいに繊細な違いや個性を生み出しやすくなります。蔵人の目が行き届きやすく、失敗リスクを最小化しつつ挑戦的な酒造りが可能になるのです。

機械化と手作業のバランス

最新の設備を導入し機械化を進めている大手蔵も多いですが、阿部酒造は必要最低限の機械化に留め、手作業を大切にしていると言われます。洗米や蒸米、麹づくりといった工程には自動化できる部分もありますが、蔵人の五感でしか感じ取れない微妙な変化を見逃さないことが、高品質な酒づくりには欠かせません。

とくに麹づくりは日本酒の味を左右する重要な工程であり、温度・湿度管理だけでなく、麹菌の繁殖具合を直接手で触れることで確かめることも多いそうです。こうした職人技と最新技術の両立が「あべ」の繊細な味を支えています。

生酒や火入れのこだわり

仕込みが終わり、お酒が搾られると、「生酒」「火入れ酒」といった区分が生まれます。新鮮なフレーバーや瑞々しさを残すために生酒で提供される場合もあれば、品質の安定と熟成による味の深みを狙って火入れ(加熱殺菌)を行う場合もあります。「あべ」では、商品ごとにターゲットとする味わいや季節に合わせて火入れ回数を調整しており、さまざまなバリエーションを楽しめるのが大きな魅力です。


「あべ」の楽しみ方・ペアリング

温度帯で楽しむ

一般的に、新潟の淡麗辛口タイプの日本酒は冷酒常温で飲まれることが多い傾向にあります。しかし、「あべ」は商品によってはぬる燗熱燗でも面白い表情を見せるものがあります。特に、純米吟醸系の限定醸造酒は軽く温めることで甘みや旨みがふくらみ、香り立ちも優しく変化するケースがあるのです。

  • 冷酒(5〜10℃): フルーティな吟醸香や、シャープなキレを堪能できる。暑い季節やさっぱりした料理と相性良し。
  • 常温(15〜20℃): 米の旨みやボディ感が増し、味の調和をより深く楽しめる。
  • ぬる燗(40〜45℃): 酸がよりまろやかになり、甘みが際立つ。薫りもふくらみやすくなるため、コクのある料理と好相性。

料理との相性

「あべ」の多彩な味わいは、和食はもちろん、洋食や中華など幅広い料理と合わせやすいのが特徴です。以下はあくまで一例ですが、実際に合わせてみて好評な組み合わせをいくつかご紹介します。

  • 刺身・海鮮料理: 新潟らしい淡麗さを持った「あべ」は、新鮮な魚介との相性が抜群。特に白身魚や貝類など、素材の甘みを生かしたシンプルな料理と合いやすい。
  • 天ぷら・フリッター: ほどよい酸とキレが脂っこさを洗い流し、料理の旨みを引き立てる。冷酒ならではのシャープさが心地よい。
  • チーズや生ハム: フルーティで甘みのある吟醸タイプは、塩気や発酵感のあるチーズや生ハムとも好相性。白ワイン感覚で楽しめる。
  • 煮物・鍋料理: ぬる燗で味わうことで、出汁の旨みと酒の旨みが調和し、食材の風味がさらに豊かになる。
  • スパイシー料理: 甘酸っぱいフルーティなタイプの「あべ」は、中華やタイ料理など辛味のある料理との組み合わせで、絶妙なマリアージュを生むこともある。

「あべ」の入手方法・販売店

地元酒販店・専門店

「あべ」は人気が高く、年々ファンが増えていますが、阿部酒造の生産規模自体は決して大きくありません。そのため、地元・新潟県内の酒販店や専門店など、限られた流通ルートで販売されることが多いです。柏崎市周辺を訪れた際には、ぜひ地元の酒販店に立ち寄り、バリエーションをチェックしてみるのがおすすめです。

全国展開とオンライン販売

最近では日本酒専門店や百貨店の酒売り場、オンライン販売の拡大により、遠方からでも手に入れやすくなっています。ただし、限定品や季節商品は瞬く間に売り切れる場合もあるため、こまめに情報をチェックすることをおすすめします。公式サイトやSNS、または取り扱い店の情報発信を追いかけると、最新リリース情報をいち早くキャッチできます。

蔵元直営ショップ・イベント

阿部酒造では、蔵元見学を受け付けている場合もあります。予約制や特定の期間のみ公開されることが多いので、事前に問い合わせてみると良いでしょう。蔵元でしか手に入らない限定商品や、テイスティングイベントなどを体験できる可能性もあります。

また、百貨店や酒イベント、試飲会などに積極的に参加していることもあるため、都市部に住む人はそういった催しを活用して試飲・購入する方法もあります。


「あべ」が生み出す新潟酒の新たな潮流

新潟酒のイメージ変革

新潟県といえば「淡麗辛口」のイメージが広く浸透しており、それ自体が長年のブランド価値ともなっていました。しかし最近では、より多様な味わいを生み出すために、県内外のさまざまな米や酵母を使い分ける試みが活発化しています。

「あべ」はまさにその象徴的存在であり、古くからのファンを喜ばせる要素(透明感やキレ)を残しつつも、フルーティな香りやコクをもつ日本酒の可能性を追求しています。これにより、新潟酒のイメージを塗り替えると同時に、新たなファン層を開拓しているのです。

若手蔵元の台頭と連携

阿部酒造のように、若手蔵元が主導となって改革を進めている酒蔵は、新潟県内だけでなく全国的にも増えています。SNSやオンラインメディアを駆使して、自らの酒造りの哲学やストーリーを発信することで、消費者との直接的なコミュニケーションを実現しているのです。

また、若手蔵元同士が切磋琢磨し合い、情報交換や共同イベントの開催などを通じて日本酒全体を盛り上げる動きも見られます。これらの取り組みが、ひとつのブランドだけでなく、日本酒業界全体の活性化につながっていると言えるでしょう。


飲むだけじゃない!「あべ」を使ったアレンジ

カクテルベースとして

フルーティで酸の効いた「あべ」は、洋酒感覚でカクテルのベースとしても楽しめます。たとえば、ジンジャーエールやトニックウォーター、炭酸水で割ることで爽やかなサワーが作れます。日本酒初心者の方や、甘いお酒が好きな方でも飲みやすくなりますし、パーティーシーンにもぴったりです。

料理への活用

日本酒は料理酒として使われることも多いですが、高品質な「あべ」を料理酒に使うのは少しもったいない気もします。しかし、鍋の出汁や煮物の風味付けに少し加えるだけで、素材の臭みを消し、旨みを引き出す効果が期待できます。また、マリネやソースに使っても、フルーティで奥行きのある風味をプラスできるでしょう。


まとめと今後の展望

長い歴史を持つ新潟県柏崎市の小さな酒蔵、阿部酒造が送り出す日本酒ブランド「あべ」。その魅力は、若い蔵元と蔵人たちが伝統的な技術を大切にしながら、新しい感性や革新的なアプローチを積極的に取り入れている点にあります。

  • 従来の新潟酒にとらわれない、フルーティでコクのある味わい
  • 小仕込みによる繊細な温度管理と手間を惜しまない職人技
  • 地元の契約農家との連携により、米のポテンシャルを最大限に引き出す取り組み
  • 洗練されたラベルデザインとSNSを活用した情報発信

これらすべてが合わさり、「あべ」は国内外の日本酒ファンの心を掴んで離しません。さらに、今後も限定醸造や新たな米・酵母の研究、醸造技術の向上など、挑戦を続けることでしょう。日本酒の多様性を広げ、若い世代や海外の人々にも受け入れられる「新潟酒」の象徴的存在として、「あべ」の活躍はますます注目を集めると期待されます。

もし、まだ「あべ」を飲んだことがないという方がいらっしゃれば、ぜひ一度手に取ってみてください。新潟の恵まれた自然環境と、若き情熱あふれる蔵元の想いが詰まった一杯は、日本酒の新しい魅力をきっと感じさせてくれるはずです。自宅でゆっくり楽しむも良し、大切な方への贈り物にするも良し。食卓に花を添える存在として、「あべ」はあなたの日本酒ライフを豊かにしてくれることでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。これを機に、ぜひ「あべ」の世界に足を踏み入れてみてください。日本酒の奥深さと、新世代の蔵人たちの情熱に触れられる素晴らしい体験が、あなたを待っています。

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