※お酒は20歳になってから
お酒は「百薬の長」といわれることもありますが、同時に飲み過ぎは健康を害する原因になるとよく耳にしますよね。事実、お酒は体質や飲み方次第で「毒にも薬にもなる」というのが本当のところ。では、「健康にいい」といわれるお酒にはどんな種類があって、どのような効果が期待できるのでしょうか。今回は、数あるお酒の中から「実は身体にいいかもしれない」と注目されている4種類のお酒をピックアップし、その特徴や健康効果、そして飲む際の注意点などを詳しくご紹介します。お酒好きの方も、そうでない方も、ぜひ最後までお読みいただき、適切な付き合い方を考えるヒントにしてみてください。


1. はじめに:お酒と健康の関係
お酒は本当に「百薬の長」?
お酒は古くから「百薬の長」と称され、社交の場やリラックスのためなど、人々の生活に寄り添ってきました。一方で、飲み過ぎや依存症などの問題もあり、お酒との付き合い方を誤ると健康を損ねる要因となります。実際、過度なアルコール摂取によって肝臓や心臓への負荷が高まり、高血圧や脂質異常症、肝硬変などのリスクが増すことが知られています。
しかし、適度な量であれば、血行促進によるリラックス効果が期待できたり、含まれる成分によってさまざまな身体への良い影響が報告されていたりもします。「適度な量」とは人によって異なりますが、一般的には厚生労働省が推奨する「純アルコールで1日平均約20g程度」が目安といわれています。これはビール中瓶1本(500ml程度)や、日本酒1合(180ml)、ワイン2杯(200ml程度)に相当します。
「健康にいい」とされる理由
お酒の中には、発酵や醸造の過程で生まれるさまざまな成分が含まれています。たとえばポリフェノールやアミノ酸、ビタミン類など。これらの成分が抗酸化作用をもたらす可能性や、腸内環境を整える働きが期待できるなど、学術的な研究も少しずつ増えています。ただし、こうした「お酒に含まれる有用成分」は、必ずしも多量の摂取を推奨するものではありません。適量を守るからこそ、これらの恩恵にあずかれる可能性が生まれるのです。
今回取り上げるのは、健康にいいと注目を浴びることの多い4種類のお酒「赤ワイン」「日本酒」「ビール」「ウイスキー」です。それぞれの特徴や得られる可能性のある効果を見ていきましょう。
2. 健康効果が期待できるお酒4選
1) 赤ワイン

赤ワインの特徴
赤ワインは、ブドウの果皮や種子を含めた状態で発酵させるため、ブドウ由来のポリフェノールが豊富に含まれます。とくに赤ワインの色の元となっているアントシアニンや、注目成分である「レスベラトロール」は抗酸化力が高いとされています。フランス人はチーズやバターなど動物性脂肪を多くとっているにもかかわらず、心疾患のリスクが比較的低いという「フレンチパラドックス」をご存じの方も多いかもしれません。これが赤ワインに含まれるポリフェノールと関連しているのではないかという説が取り上げられ、赤ワインの健康メリットに注目が集まりました。
健康効果
- 抗酸化作用
赤ワインのポリフェノールは、活性酸素を抑える抗酸化作用があると考えられています。活性酸素による細胞の酸化ストレスを抑えることで、老化や生活習慣病の予防に役立つ可能性があります。 - 血液循環のサポート
適度なアルコール摂取は血管を拡張し、血液循環を良くする効果が期待できます。また赤ワインに含まれるポリフェノールも血管をしなやかに保つ手助けをするといわれています。 - リラックス効果
アルコール自体がもたらすリラックス効果に加え、ワイン特有の香り成分や、豊富な味わいは食事をゆっくり楽しむ雰囲気づくりに役立ちます。食事とのマリアージュ(相性)を探ることで、心地よいひとときを過ごせるでしょう。
飲み方のポイント
- 適量を守る
赤ワインはポリフェノールが豊富な反面、アルコール度数も通常12〜14%ほどと高めです。グラスワイン1〜2杯程度にとどめるなど、自分の身体と相談しながら量を調整しましょう。 - 食事と合わせる
赤ワインには、チーズや肉料理などをはじめさまざまな料理との相性が良いものが多いです。ただし脂肪分の多い食事をとりすぎると、かえって健康リスクにつながる場合があるので適度に楽しみましょう。
2) 日本酒

日本酒の特徴
日本酒は米と米麹、水を発酵・醸造して作られる伝統的なお酒です。アルコール度数は一般的に15〜16%程度ですが、最近はアルコール度数が低めの「低アルコール日本酒」も出回っています。米麹の力で生み出されるアミノ酸やペプチドが豊富なのが特徴で、「味噌」「しょうゆ」などと同様に日本ならではの発酵食品の一種とされています。
健康効果
- アミノ酸による美容・健康への寄与
日本酒には「アラニン」「グルタミン」など多種類のアミノ酸が含まれています。これらアミノ酸は筋肉のエネルギー源としても利用されるほか、皮膚の保湿や代謝サポートなど、美容・健康維持に必要な成分でもあります。 - 米麹由来の酵素・ビタミン類
日本酒の醸造過程で、麹菌がデンプンを糖化し、同時に多くの酵素やビタミンB群などを生み出します。こうした成分が腸内環境を整えたり、疲労回復をサポートしたりする可能性があると期待されています。 - 飲む点滴?甘酒との類似性
同じ米麹からつくられる甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれ、その栄養価の高さが注目されています。日本酒と甘酒では発酵過程やアルコール含有量が異なりますが、基となる原料や微生物が同じため、似たような有用成分も多く含まれていると考えられます。
飲み方のポイント
- 温度帯を楽しむ
日本酒は燗(かん)をつけたり常温や冷酒で飲んだりなど、温度帯で味わいが大きく変わります。身体を温めたい時期には燗酒でほっこり、暑い季節には冷酒でスッキリと楽しむことができます。これによって気分転換やリラックス効果も高まりやすいでしょう。 - 適量厳守
アルコール度数15〜16%はワインと同程度ですが、ついついおちょこを重ねて飲みすぎることもあります。1合(約180ml)程度を目安に、ゆっくりと味わいを楽しみましょう。 - 塩分との取り過ぎに注意
日本酒は塩辛いおつまみ(塩辛や漬物、珍味など)と合いやすい一面があります。飲みやすさからついお酒もおつまみも進む…という状況になりがちなので、塩分過多には気をつけましょう。
3) ビール

ビールの特徴
ビールは大麦やホップなどから造られる世界的にもポピュラーなお酒です。アルコール度数は一般的に5%前後で、喉越しの良さや爽快感が魅力。近年はクラフトビールブームによってさまざまな味や香りを持つ製品が登場し、ますますファンを増やしています。
健康効果
- ホップ由来のリラックス効果
ビール特有の苦味や香りはホップによるものです。ホップには「フムロン」や「ルプリン」といった成分が含まれており、これらが鎮静作用やリラックス効果をもたらす可能性が研究で示唆されています。 - ビール酵母に含まれる栄養素
ビールづくりの要となる酵母には、タンパク質やビタミンB群、ミネラル類などが含まれています。ただし、市販のビールには酵母がろ過されている場合も多いので、酵母の恩恵を最大限受けたいなら「酵母ビール」「クラフトビール」の中でも無ろ過のタイプを選ぶのも一案です。 - 食欲増進効果
ビールに含まれる炭酸ガスや苦味成分が胃を刺激し、食欲増進効果をもたらす場合があります。食が細くなりがちな時には一役買うこともありますが、飲みすぎ食べすぎには注意が必要です。
飲み方のポイント
- 適切な量とタイミング
ビールはアルコール度数が低い分、飲みやすい反面、一度にたくさん飲みがちです。飲みやすいからといって量が増えると、カロリーや糖質も多く摂取してしまうので、1日500ml〜700ml程度(大びん1〜1.5本)を目安に控えめに楽しみましょう。 - プリン体との関係
痛風の原因として取り沙汰されるプリン体はビールにも含まれていますが、実は他の食品に比べてそれほど圧倒的に多いわけではありません。ただし、ビールをたくさん飲む人は総アルコール量やカロリー、塩分・糖質摂取量が増えやすい傾向にあるので、やはり過度にならないように注意が必要です。 - おつまみの選び方
揚げ物や濃い味つけの料理はビールと合いますが、カロリーや塩分が高くなる傾向があります。サラダや枝豆などを取り入れて、栄養バランスを考えつつ適度に楽しむのが理想です。
4) ウイスキー

ウイスキーの特徴
ウイスキーは穀物を原料に発酵・蒸留し、さらに樽で熟成させて造られます。スコッチ、バーボン、アイリッシュ、ジャパニーズなど生産地や製法による多彩な味わいが魅力です。アルコール度数は40%前後と高く、ストレートで飲むと強い刺激がありますが、ハイボールにしてソーダで割ったり、水割りにして度数を下げたりと、さまざまな飲み方が楽しめます。
健康効果
- エラグ酸による抗酸化作用
ウイスキーを熟成させる樽の成分(とくにシェリー樽など)から溶け出すポリフェノールの一種「エラグ酸」は、赤ワインにも含まれる物質として知られています。エラグ酸にも抗酸化作用があると考えられ、生活習慣病予防への寄与が期待されています。 - 糖質がほぼゼロ
ウイスキーは蒸留酒なので、ビールや日本酒などの醸造酒に比べて糖質が含まれていないか、含まれていてもごく微量です。そのため、糖質制限を気にする方が選択肢に入れやすいお酒としても注目を集めています。 - 飲む量が管理しやすい
アルコール度数が高い分、ストレートやロックだと少量で満足感が得られやすいという利点があります。ゆっくり飲むため、摂取量をコントロールしやすい面があるともいえます。
飲み方のポイント
- ハイボールで楽しむ
アルコール度数を下げつつ、ソーダの爽快感を活かせるハイボールは人気の飲み方です。レモンやライムなどを入れることでさらに風味を楽しめます。 - 飲み過ぎ注意
度数が高いお酒ですから、ロックやストレートでの飲みすぎは体に大きな負担をかけます。1日にウイスキー60ml(ダブル1杯分)ほどを目安に、あとはソーダや水で割ってゆっくり楽しむのがおすすめです。 - 食事との合わせ方
ハイボールにして食中酒として楽しむ人も増えていますが、ウイスキー特有のスモーキーさや甘いバニラ香などは、チョコレートやナッツ、燻製系のおつまみと好相性です。しっかり食事を楽しむときは、味のバランスを考えて飲み方を工夫しましょう。
3. お酒を飲む際の注意点・適量とは?
ここまで4種類のお酒の特性と期待される健康効果についてご紹介してきました。しかし、どんなに健康効果があるとされるお酒であっても、アルコールである以上は飲み過ぎるとデメリットが大きくなってしまいます。
適量の目安
厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」を1日平均純アルコール量20g程度としています。これはあくまで一般的な目安で、個人差があります。身体が小柄な方や女性、また普段お酒に慣れていない方にとっては、20gでも多い場合があります。逆に体格の良い方や日頃から適度にアルコールを摂取している方は、もう少し多くても問題ないということもありますが、いずれにせよ「飲み過ぎ」が及ぼす弊害は全ての人にとって共通です。
飲み方のコツ
- 空腹状態を避ける
空腹時にアルコールを摂取すると、急激に吸収されやすく、酔いが回りやすいだけでなく、胃腸への負担も大きくなります。何かしらおつまみや食事と合わせるのが望ましいです。 - 水分補給をしっかり行う
アルコールには利尿作用があるため、放っておくと脱水気味になりがちです。お酒を飲む合間に水を飲む“チェイサー”をはさむことで、飲み過ぎ防止や二日酔い対策にもつながります。 - 週に2日以上の休肝日
習慣的に飲酒する場合は、週に2日ほどはまったくお酒を飲まない日を作ることが推奨されています。肝臓を休ませることで、長期的に健康を維持しやすくなります。
注意が必要な方
- 未成年や妊娠中・授乳中の方
未成年の飲酒は法律で禁止されています。また、妊娠中・授乳中の飲酒は胎児や乳児に悪影響を及ぼす可能性があるため避けましょう。 - 薬を服用している方
お酒と薬の組み合わせは副作用を引き起こすリスクがあります。持病の薬を服用している場合や、抗生物質を飲んでいる場合などは、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。 - 肝機能や体質に不安がある方
お酒を飲むとすぐに顔が真っ赤になる方や、肝機能検査の数値が良くない方などは、特に飲酒量に気を配るか、場合によっては控えたほうがよいです。
4. まとめ

今回は、健康効果が期待できるといわれるお酒4種類—「赤ワイン」「日本酒」「ビール」「ウイスキー」—を取り上げ、それぞれに含まれる成分や期待されるメリット、そして飲み方のポイントを解説しました。以下に要点を振り返ってみましょう。
- 赤ワイン
- ポリフェノール(アントシアニンやレスベラトロール)による抗酸化作用
- 適度な血行促進やリラックス効果
- アルコール度数が高めなので、1〜2杯を目安に食事と合わせて楽しむ
- 日本酒
- 米麹由来のアミノ酸や酵素、ビタミンB群などを含む
- 飲む温度帯による味わいの変化でリラックス効果も
- 1合(180ml)程度でゆっくり楽しむのがベター
- ビール
- ホップの成分によるリラックス効果やビール酵母の栄養素
- 喉越しの良さから飲みすぎに注意、1日500ml〜700ml程度が目安
- 食欲増進効果はあるが、つまみのカロリーや塩分には注意
- ウイスキー
- 蒸留酒で糖質がほぼゼロ。樽由来のエラグ酸が抗酸化に寄与する可能性
- アルコール度数が高いので少量で満足しやすい
- ハイボールや水割りなどで度数を調整しながら楽しむ
どのお酒も、適度なアルコール摂取による血行促進やリラックス効果はもちろん、原料や製法に由来する成分が含まれているため、一概に「体に悪い」だけのお酒ではありません。しかし、繰り返しになりますが、あくまで最も重要なのは「適量・節度を守ること」です。
また、飲酒習慣がある方もない方も、自分の身体と向き合いながら楽しむことが大切です。肝臓への負担は常に念頭に置き、定期的な健康診断や休肝日を取り入れるなど、生活習慣全体のバランスを考えていきましょう。
最後に、お酒は嗜好品ですから、その楽しみ方は人それぞれです。食事やおつまみとの組み合わせを考えたり、季節に合わせて温度や種類を変えたりすることで、より豊かな飲み方ができるでしょう。「身体に良さそうだから」という理由だけで無理に飲むよりも、「味や香りを楽しみたい」「人との会話を楽しみたい」という前向きな目的をもって、お酒と上手に付き合っていただければと思います。
参考:純アルコール量の計算方法
- 純アルコール量(g) = 飲酒量(ml) × アルコール度数(%) × 0.8(比重) ÷ 100
例)ビール500ml(アルコール度数5%の場合)
⇒ 500ml × 5% × 0.8 ÷ 100 = 20g
おわりに
今回は「実は身体にいい?健康効果が期待できるお酒4選」というテーマで、赤ワイン・日本酒・ビール・ウイスキーの4種類をご紹介しました。どれも一度は耳にしたことのある「健康メリット」がある一方、アルコール飲料である以上リスクもゼロではありません。ポイントは「飲み方・付き合い方」。適量を守って上手に付き合えば、生活を少し豊かに彩る存在になってくれるでしょう。
みなさんも「飲み過ぎない」「休肝日を作る」「バランスの良い食事を心がける」など、基本的な生活習慣を大切にしながら、自分に合ったスタイルでお酒を楽しんでみてください。もし飲む際に不安がある方や、現在治療中の方は、必ず医療関係者に相談のうえで適切な判断をしましょう。
それでは、長い記事を最後までお読みいただきありがとうございました。今後もお酒の世界はどんどん広がっていきますので、新しい知識や情報も取り入れつつ、ご自身のペースで「おいしくて健康的なお酒ライフ」を送っていただければ幸いです。
