※お酒は20歳になってから
日本のビール文化は、明治維新以降に外国から製法や設備を取り入れながら独自の発展を遂げ、いまや国民的飲料として多くの人々に愛されています。暑い日に飲むキンキンに冷えたビールはもちろんのこと、和食や洋食、中華などさまざまな料理との相性も抜群で、食卓に彩りを与えてくれる存在です。最近ではクラフトビールブームも加速し、伝統的な大手メーカーのビールだけでなく、地域密着型のブルワリーが作る個性的なビールも注目を集めています。そんな日本において、「どのビールが人気なのか」は多くの方が気になるトピックではないでしょうか。
本記事では、日本のビール人気ランキングをもとに、代表的な銘柄の特徴やその背景となるストーリー、さらには日本のビール文化の変遷や今後のトレンドにも触れながら、詳しく解説していきます。お酒を楽しむ方はもちろん、ビール好きだけど詳しくは知らないという方、これからビールを飲んでみたいというビギナーの方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
日本におけるビールの歴史と主要メーカーの概観
ビールはもともと中世ヨーロッパで修道院などを中心に醸造され、世界各地へ広がっていったといわれています。日本では江戸時代末期にポルトガルやオランダから洋酒のひとつとして伝えられましたが、本格的に作られ始めたのは明治維新後です。文明開化の風潮や日本の産業振興政策なども相まって、国内各地でビール醸造所が誕生しました。
現在、日本のビール市場を牽引する大手メーカーは主に以下の4社です。
- アサヒビール(アサヒグループホールディングス)
「アサヒスーパードライ」で有名。苦味を抑えた飲みやすい辛口の味わいが特徴的で、1980年代後半以降のビール市場を大きく変えた存在です。 - キリンビール(キリンホールディングス)
「キリン一番搾り」「キリンラガー」など、ロングセラーから新商品まで幅広く展開。日本のビールの歴史を語るうえで欠かせない老舗メーカーのひとつです。 - サッポロビール(サッポロホールディングス)
「サッポロ黒ラベル」が看板商品。日本最古のビールブランドとも言われる「サッポロラガービール」も根強いファンが多く、道産子ビールとして有名です。 - サントリー(サントリーホールディングス)
「ザ・プレミアム・モルツ」でプレミアムビールブームの先駆けとなった企業。ウイスキーやチューハイ、ソフトドリンクにも強みを持ち、日本を代表する総合飲料メーカーです。
さらに、沖縄発祥の「オリオンビール」など地域に根ざしたメーカーや、全国各地で急増中のクラフトビールブルワリーも注目を集めています。こうした背景を踏まえて、まずは大手メーカーを中心に人気銘柄のランキングを見ていきましょう。
日本のビール人気ランキング(大手銘柄編)
ここでは、大手ビールメーカー各社が展開する銘柄の中から、国内での売上や消費者の支持率、飲食店での提供状況などを総合的に勘案したうえでの“おおまかな”人気ランキングを紹介します。なお、ビールの好みは人それぞれであり、流行や地域差、販売チャネル(コンビニ・スーパー・居酒屋など)の違いもあるため、あくまで参考としてご覧ください。
第1位:アサヒスーパードライ(アサヒビール)

- 特徴・味わい
1987年の発売開始と同時に、当時のビール市場の常識を覆した「辛口」路線のビールです。苦味を最小限に抑え、キレの良さを強調した飲みやすい味わいが特徴。「スーパードライ=辛口ビール」というイメージを確立し、日本人の味覚にフィットしたのか、発売当初から爆発的なヒットを記録。以後、ビールの味わいやパッケージに「ドライ」を冠する商品が他社からも追随して登場したほどです。 - 人気の理由
飲み口の軽快さ、シャープな炭酸感、さわやかな後味が支持を集めています。食事との相性もよく、和食や家庭料理だけでなく、中華やイタリアンなど幅広いシーンで飲まれる一本です。全国の居酒屋やレストランで樽生ビールとしての流通量も非常に多く、日本を代表する大衆的なビールといえるでしょう。
第2位:キリン一番搾り(キリンビール)

- 特徴・味わい
1990年に誕生した「キリン一番搾り」は、麦汁を搾る工程で「最初に流れ出る一番搾り麦汁だけ」を使用するという製法が特徴です。そのため、雑味が少なく、麦のうまみをしっかりと感じられる澄んだ味わいが魅力。飲み口はスムースでありながら、ほのかな甘みとコクを併せ持つバランスが絶妙です。 - 人気の理由
キリンの長い歴史と技術力が詰まったフラッグシップ商品といっても過言ではありません。テレビCMや大規模なプロモーション展開も積極的に行われており、そのブランドイメージも相まって高い人気を維持しています。また、派生商品として「一番搾り 糖質ゼロ」や地域限定バージョンなど、ラインナップの拡充も消費者を飽きさせない要因となっています。
第3位:サッポロ黒ラベル(サッポロビール)

- 特徴・味わい
シンプルな黒いラベルがトレードマーク。強すぎない苦味とマイルドな香味のバランスが絶妙で、飲み飽きしない正統派のラガービールといわれています。「大人の生」というキャッチコピーを掲げることも多く、コク深い麦のうまみや程よいホップの香りを堪能できるのが特徴です。 - 人気の理由
もともと北海道で発祥したサッポロビールというブランドのイメージもあり、道産子ファンが多いのはもちろん、全国的にも根強い支持を獲得しています。黒ラベルのCMには有名俳優を起用しており、そのスタイリッシュなブランド戦略も人気を下支え。飽きのこないオーソドックスな味わいは、年代を問わず愛飲されています。
第4位:ザ・プレミアム・モルツ(サントリー)

- 特徴・味わい
2003年に誕生したプレミアムビールの先駆け的存在。「香る」「コクがある」といった要素を重視し、ヨーロッパ産アロマホップや厳選された麦芽を使用。クリーミーな泡立ちとリッチな香りが楽しめるワンランク上の味わいが魅力です。特に「香るエール」シリーズはフルーティーな香りが特徴的で、若い層や女性にも好評を博しています。 - 人気の理由
プレミアム路線でありながら、全国のコンビニやスーパーでも手軽に購入できる価格帯と流通経路が整備されているのが大きいです。また、居酒屋やレストランでもプレミアムビールを飲みたいという需要が高まり、樽生としての展開も拡大。家での贅沢ビールとしても人気があり、休日にじっくり味わいたいという層から絶大な支持を得ています。
第5位:キリンラガービール(キリンビール)

- 特徴・味わい
「日本を代表するラガービール」として、その歴史は1888年にまで遡ります。麦のうまみを重視したしっかりとしたコク、ほどよい苦味が特徴で、ビール好きの方からは「やっぱりラガー」と言われるほどの根強い評価を得ています。一番搾りと比べると、よりクラシカルで力強い味わいといえます。 - 人気の理由
日本で最も長い歴史を持つビールブランドの一つとして、伝統と信頼感があります。また、近年では復刻版のラベルや限定デザインなど、懐かしさをくすぐるプロモーション活動も展開。居酒屋などでは長年支持を集めており、「ビール=キリンラガー」と考える固定ファンも一定数いるため、上位にランクインする人気を維持しています。
第6位:サントリー金麦(サントリー)

- 特徴・味わい
発泡酒カテゴリーとしてのスタートでしたが、その後のリニューアルや新ジャンル商品「金麦〈糖質75%オフ〉」など、派生商品も多く展開されています。リーズナブルな価格帯とさっぱりとした飲み口が特徴で、毎日の晩酌に取り入れやすい一本です。厳密にはビールではなく新ジャンルや発泡酒に分類される場合がありますが、消費者には「ビール感覚」のお酒として認知されています。 - 人気の理由
コスパの良さや手に取りやすい味わいが若年層からシニア層まで幅広いファン層を開拓しました。新ジャンルとして販売本数も多く、CMや広告などで積極的にアピールしていることもあり、大手量販店やコンビニでも常に目立つ位置に陳列されています。糖質オフやカロリー控えめタイプも多いので、健康志向の方にも受け入れられています。
第7位:サッポロ エビスビール(サッポロビール)

- 特徴・味わい
「ヱビスビール」は1890年創業の日本麦酒(現在のサッポロビールの前身)にルーツをもつプレミアムビールです。厳選した麦芽とホップをふんだんに使用し、やや濃色でしっかりとしたコク、香りが楽しめます。グラスに注いだときの美しい泡と、ふくよかな香味が贅沢感を演出してくれます。 - 人気の理由
プレミアム系の代表格として、贈答用やお祝い事の席などにもよく選ばれます。「ちょっと贅沢したい日」にぴったりのビールとして認知されており、その高品質なイメージは海外でも評価が高いです。最近では「ヱビス プレミアムブラック」や季節限定商品などバリエーション展開も豊富で、多様な味わいを楽しめるブランドになっています。
第8位:オリオンビール(オリオンビール)

- 特徴・味わい
沖縄を代表するビールメーカー。メインブランドである「オリオンドラフト」はさっぱりとした飲み口と軽めのボディが特徴で、南国の気候や海鮮料理にぴったりマッチします。アルコール度数もやや低めなので、暑い季節やビーチパーティーでグイグイ飲むのに適しています。 - 人気の理由
なんといっても「沖縄らしさ」が大きな魅力。沖縄旅行で現地の空気感とともに味わってファンになる人も多く、県外でも人気が高まっています。近年ではアサヒビールとの協業体制を強化したことで、流通や販売チャネルが拡大し、全国のスーパーやコンビニでも入手しやすくなっています。夏になると売り場でも目立つ存在になり、季節限定の感覚で購入するファンも多いです。
第9位:アサヒ 熟撰(アサヒビール)

- 特徴・味わい
アサヒが手がけるプレミアム系ビールの一つ。通常のスーパードライとは一線を画した、麦のコクを重視した味わいが特長です。厳選麦芽とホップを使い、低温でじっくり熟成させることで深みある風味とまろやかさを実現。アルコール度数は5.5%とやや高めで、飲み応えを求める方に好まれています。 - 人気の理由
スーパードライの爽快感とは違った、贅沢感やリッチ感が味わえる点がアサヒファンから支持されています。やや価格帯は高めですが、その分「家でのちょっとしたご褒美」や「特別な日」に選ばれることが多いです。また、他社のプレミアムビールに比べてまだ知名度が低い点もあり、「少し通好み」の印象があることも人気の要因の一つです。
第10位:クラフトビール全般

- 特徴・味わい
一概にまとめるのは難しいですが、ここ数年でクラフトビールのカテゴリ全体に対する注目度が急上昇しています。IPA(インディア・ペール・エール)をはじめ、ヴァイツェンやスタウトなど、世界各国のビアスタイルを日本の小規模ブルワリーが独自にアレンジ。フルーティーな香りや濃厚な味わいが楽しめるもの、地元産の果物やスパイスを使った斬新なフレーバーのものなど、実に多彩な展開があります。 - 人気の理由
地域密着型でストーリー性があり、クラフトビールごとに個性的な味わいを楽しめるのが魅力です。ビールの新しい楽しみ方として若い世代に受け入れられているほか、大人の趣味としてブルワリー巡りをする人も増加。SNS映えするパッケージデザインや限定醸造品も多く、特に都市部を中心に愛好家をどんどん増やしています。
クラフトビールの隆盛と地域性
先述のとおり、ここ数年は日本のクラフトビール市場が拡大傾向にあります。1994年の酒税法改正によって比較的容易にビール醸造免許が取得できるようになったことをきっかけに、地方の温泉地やリゾート地で「地ビール」として誕生したのが始まりです。現在は「地ビール」から「クラフトビール」へと呼称も変わり、都市部でもおしゃれなブルワリーやビアバーが次々と登場。各地域の特色ある原材料(フルーツ、ハーブ、特産の穀物など)を使った意欲的な商品開発が進んでいます。
クラフトビールが人気を集める理由は以下のとおりです。
- 味わい・香りの多様性
大手メーカーにはないチャレンジングなレシピや醸造スタイルが楽しめる。 - 地元応援・ストーリー性
地域の水や原材料を使い、ブルワーのこだわりや背景が感じられる。 - 飲食店とのコラボ
地元レストランや居酒屋とのコラボで地域創生の取り組みが進む。 - SNS映え
パッケージデザインや限定イベントなど、写真映えや話題性が高い。
また、一部の地域では地元の観光資源と連携してビアフェスや収穫祭などのイベントが開催され、それがさらにクラフトビールの認知度と人気を後押ししています。ビール好きの中には、旅行先でその土地ならではのクラフトビールを飲むことを楽しみにしている人も多く、今後もこのブームは続くと考えられます。
ビール市場のトレンドと今後の展望
日本のビール市場全体としては、高度経済成長期~バブル期にかけて「とにかくたくさん売れるビールを大量生産する」時代を経て、消費者の多様化した嗜好に合わせる方向へシフトしてきました。発泡酒や第三のビール(新ジャンル)が登場したことで価格競争が激化し、一方でプレミアム系ビールやクラフトビールが「質や個性を重視する消費者」の需要を取り込んでいます。
特に近年は健康志向の高まりにより、「糖質オフ」「プリン体ゼロ」「カロリー低減」などの機能性を強化した商品への注目度が高まっており、大手各社は次々と新作をリリースしています。また、海外のビールブランドとのコラボ商品や、海外で人気のIPAスタイルを日本向けにアレンジするなど、国際化も進んでいます。
今後の注目ポイント
- ゼロ系商品の台頭
糖質ゼロやプリン体ゼロの商品開発がさらに加速し、アルコール度数が低めのライトビール市場も拡大が見込まれる。 - ノンアルコール・ローアルコールビールの拡充
健康意識の高まりや飲酒運転防止の観点から、ノンアルコールやローアルコールでも味わいを追求する流れが強まる。 - クラフトビールの市場拡大
新規参入するブルワリーが続出し、ビアスタイルの多様化がさらに進むと予想。地方創生の切り札としても期待されている。 - プレミアムビールの進化
大手メーカーによる既存のプレミアムブランドの強化や限定醸造の試みが一層活発になり、消費者の「特別感」へのニーズに応える形が進む。
日本ビールをより楽しむためのポイント
- グラスやジョッキの選び方
ビールの泡は味わいと香りをより豊かにしてくれます。口径の広いグラスやジョッキを使えば泡立ちがよくなる一方、香りを閉じ込める専用グラスを使えば芳醇なアロマを楽しむことができます。飲み方のスタイルに合わせて選びましょう。 - 適正温度と注ぎ方
キンキンに冷やして飲みたい方も多いですが、クラフトビールなどは少し高めの温度で飲むと隠れていた香味が引き立つ場合もあります。飲み比べする際には、温度の変化による味の違いも楽しんでみてください。また、泡を作りつつ注ぐことで苦味がマイルドになり、口あたりがまろやかになるというメリットもあります。 - 料理とのペアリング
日本のビールは比較的ライトな味わいが多いため、和食のみならず様々な料理に合わせやすいのが特徴です。一方で、クラフトビールの中には濃厚な味わいのスタウトやフルーティーなホワイトエールなど、特定の料理との相性が抜群なものも。ぜひ自分好みのペアリングを探してみてください。 - 地域限定や季節限定を狙う
大手メーカーでも季節限定ビールや地域限定ラベルなどが登場します。春の桜デザイン缶や冬の限定醸造など、限定品は手に入るタイミングが限られているため、見つけたらぜひトライしてみましょう。クラフトビールでも「数量限定」や「コラボ醸造」が頻繁に行われるため、SNSや公式サイトなどをチェックしておくと見逃しません。
まとめ
ここまで、日本のビール人気ランキングとして大手メーカーの主力商品を中心にご紹介してきました。長年愛され続ける伝統的なビールから、新しい製法やコンセプトを取り入れたプレミアム系、さらには発泡酒や新ジャンル、クラフトビールに至るまで、その多様性は目を見張るものがあります。とりわけ近年はクラフトビールのブームに伴い、日本全国で個性的なブルワリーが誕生し、ビールをめぐるカルチャーがますます豊かになっています。
ビールの楽しみ方は人それぞれですが、「飲むだけでなく背景を知るともっと美味しく感じる」ことも事実です。各銘柄が持つ歴史や生まれた土地とのつながり、ブルワーやメーカーの想いなどを知ることで、ビールの味わいがさらに深まるでしょう。また、健康志向やライフスタイルの変化に合わせて、糖質オフやアルコール度数の低いビールを選ぶ人も増えています。今後はますます商品ラインナップが豊富になり、自分にぴったりのビールが見つかる可能性が高まるはずです。
最後に、今回ご紹介したランキングはあくまで市場規模や一般的な評価を元にしたものであり、個々人の好みは千差万別です。自分の舌で実際に飲んで、好きな味わいを見つけることがいちばん大切です。ぜひ今回の記事を参考に、いろいろなビールとの出会いを楽しんでみてください。ビールは奥が深く、知れば知るほど世界が広がる飲み物です。お気に入りの一本がきっと見つかることでしょう。
これからビールを飲む機会がありましたら、ぜひ記事を思い出して銘柄選びの参考にしていただければ幸いです。乾杯!