【日本酒の至宝】鍋島 中汲み──中取りが織り成す極上のテイストを徹底解剖

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はじめに
日本酒好きの方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれない銘柄「鍋島(なべしま)」。その中でも、特にファンからの評価が高いのが「鍋島 中汲み」です。「中汲み」は、日本酒の搾り工程で得られる中間部分のみを取り出した贅沢な一本。フレッシュさと透明感、そして華やかな香りを持ちつつも、しっかりとした米の旨みが感じられる大変人気の高い商品です。本記事では、「鍋島 中汲み」の魅力を存分に掘り下げ、その製造元である富久千代酒造の歴史や、特徴的な香味、さらにはおすすめのペアリングや温度帯、購入時の注意点など幅広い視点から詳しく解説していきますので、どうぞ最後までお付き合いください。


鍋島の造り手:富久千代酒造の歴史とこだわり

富久千代酒造とは

「鍋島 中汲み」を醸すのは、佐賀県鹿島市に蔵を構える富久千代酒造です。創業は元文2年(1737年)とされ、江戸時代から長い歴史を重ねてきました。地元・佐賀の米、水、気候風土を活かし、伝統的な技術と最新の醸造法を組み合わせることで、国内外から高く評価される日本酒を生み出しています。

「鍋島」の由来

銘柄名である「鍋島」は、かつて佐賀藩を治めた鍋島氏にちなみます。佐賀藩の藩主家として名を馳せた鍋島家の歴史は、佐賀の文化や産業を語るうえで欠かせません。その由緒ある地で、伝統と革新を掛け合わせながら日本酒を醸している富久千代酒造が、鍋島という銘柄名を冠することには、地元への敬意と誇りが込められています。

IWC受賞で一躍脚光を浴びる

富久千代酒造の日本酒が広く知られるようになったきっかけの一つが、2011年の**IWC(International Wine Challenge)**における「チャンピオン・サケ」獲得です。IWCは世界的に権威のあるワイン品評会ですが、日本酒部門も設けられています。「鍋島」はこの大会での高評価を機に、一気に全国区の知名度を得ました。もともと地元では高評価を得ていましたが、世界規模のコンテストで評価されたことで需要が急増し、入手困難な銘柄の仲間入りを果たしました。

富久千代酒造の造りの特徴

富久千代酒造は蔵元自らが杜氏として、酒づくりの全工程を監修しています。規模としては決して大きい蔵ではありませんが、その分細部にわたって目が行き届き、妥協を許さない酒づくりが行われています。特に米の選定や水質管理には厳密な基準を設けており、使用する酵母や麹菌も徹底的に吟味。こうしたこだわりの積み重ねが、「鍋島 中汲み」の完成度の高さを支えているのです。


「中汲み」とは何か:工程から見る特別感

日本酒の搾り工程

日本酒造りにおいて、もろみ(発酵完了後の液状の酒母・醪)を「搾る」段階は非常に重要です。もろみを搾ることで、液体の部分(清酒)と固形物(酒粕)に分離します。この搾りの方法やタイミングによって、最終的に得られる酒質が大きく左右されます。

  • 荒走り(あらばしり):搾り始めの最初に出てくる部分。香りや味わいはフレッシュで荒々しさを感じることが多い。
  • 中汲み(なかぐみ):搾りの中間に出てくる部分。一番安定した品質を得られやすく、雑味が少なく純度が高い。日本酒の“旨み”と“綺麗さ”が共存しやすい。
  • 責め(せめ):搾り終盤に出てくる部分。コクは強いが、やや雑味が出やすい。

「鍋島 中汲み」は、この搾り工程の“中間”部分のみを贅沢に瓶詰めしたものです。つまり、もっともバランスが良く、洗練された部分だけを集めているため、繊細かつふくよかな味わいが楽しめるのです。

中汲みならではの味わい

中汲みの特徴は、何といってもクリアな味わい酒米の旨みのバランスが優れていることです。日本酒のフレッシュ感を保持しながらも、荒々しさや雑味をそぎ落としたまろやかさがあります。そのため、香りは華やかでありつつ、口に含むとしっとりとした米の甘みと旨みがじんわりと広がるのが魅力です。


鍋島 中汲みの風味・味わい

香りの特徴

「鍋島 中汲み」は、フルーティな香りが特徴的です。使用される酒米や酵母の種類にもよりますが、りんごや梨、時にはパイナップルやメロンといったトロピカルフルーツを思わせる香りが感じられることがあります。特に“吟醸酒”や“大吟醸酒”のカテゴリーでは、華やかな果実香(吟醸香)が際立つ傾向にあります。

味の輪郭

口当たりは非常にやわらかく、滑らかなテクスチャー。口中に広がる旨みは、洗練されながらも芯のある味わいを持っています。また、甘み、酸味、旨みのバランスが整っているため、一度飲み始めるとついつい盃が進んでしまう魅惑的な味わいです。後味には嫌な苦味やエグみがほとんどなく、キレの良さも特徴的。これらのバランスが多くの日本酒ファンを魅了している理由の一つでもあります。

バリエーション

「鍋島 中汲み」には、精米歩合や酒米の違いによってさまざまなラインナップがあります。山田錦や雄町、五百万石などの酒米を使った純米吟醸や純米大吟醸、あるいは特別純米酒など、同じ「中汲み」でも酒米や製法の違いで風味が変わります。限定的にしか出回らない商品も多く、市場に流通するタイミングは年に数回だったり、出荷量が限られていたりするため、見つけた際にはぜひ試してみたいものです。


おすすめの飲み方と温度帯

冷酒で楽しむ

フレッシュでフルーティな香りを堪能したい方には**冷酒(10℃前後)**がおすすめです。冷やすことで余計な雑味が引き締まり、果実味のある香りがより一層引き立ちます。また、口当たりもいっそう滑らかになるため、最初の一杯として非常に飲みやすいのが特徴です。

常温~ぬる燗で楽しむ

「鍋島 中汲み」は冷酒が定番ですが、米の旨みをじっくり味わいたい方には常温(15~20℃前後)やぬる燗(35~40℃前後)もおすすめできます。温度を少し上げることで、香りに含まれる成分が解放されやすくなり、味により広がりと奥行きが生まれます。特に純米タイプの「鍋島 中汲み」であれば、ぬる燗にしても甘やかになりすぎず、ほどよい甘みと酸味のバランスを楽しめます。

グラスや酒器の選び方

  • ワイングラス:香りを際立たせたい場合は、ワイングラスのように口がすぼまったタイプがおすすめ。フルーティな香りが凝縮され、鼻孔をくすぐります。
  • お猪口やぐい呑み:口当たりをソフトにしたい場合や、温度変化を楽しみたい場合にはお猪口やぐい呑みも良いでしょう。少量ずつ注ぎながら、温度帯の変化による味わいの差を楽しむことができます。

おすすめの料理ペアリング

鍋島 中汲みのペアリング基本方針

「鍋島 中汲み」の特徴は、香りの華やかさと米の旨みのバランス。フレッシュな酸が程よく存在し、味全体がシャープになりすぎないため、幅広い料理と合わせやすいのが強みです。和食はもちろんのこと、素材の味を活かした洋食やアジア料理との相性も良いでしょう。

和食との相性

  • 刺身・カルパッチョ:白身魚の刺身や淡白なカルパッチョであれば、その繊細な旨みを損なわず、逆に酒の香りがアクセントになります。脂の少ない魚が特におすすめ。
  • 天ぷら:エビやキス、野菜など、さっぱりと塩や天つゆでいただく天ぷらとも好相性。揚げ物の油っこさを「鍋島 中汲み」のキレと酸味が軽やかに流してくれます。
  • 煮物・炊き合わせ:味付けが濃すぎない上品な煮物や炊き合わせなら、だしの風味と「鍋島 中汲み」のまろやかさが見事にマッチします。

洋食との相性

  • シーフードのオーブン焼き・ソテー:白身魚のソテーやホタテのバターソテーなど、素材の甘みを活かした料理に合わせると、酒の旨みがさらに引き立ちます。
  • 鶏肉のクリーム煮:クリーミーなソースのコクを「鍋島 中汲み」のさわやかな酸が引き締めるため、飲み疲れしません。
  • チーズ全般:フレッシュチーズやクリーム系のチーズなら、一見日本酒と合わせにくそうに思えますが、意外と「鍋島 中汲み」のフルーティな香りとマッチします。特にモッツァレラやブッラータなどは好相性。

アジア料理との相性

  • タイ料理のような酸味や甘味のある料理:甘辛いタレや酸味が効いたソースにも、「鍋島 中汲み」の柔らかな甘みとフレッシュな酸がよく合います。
  • 中華の点心や春巻き:皮がパリッとした春巻きやエビ蒸し餃子などとも合わせやすいです。濃厚すぎる麻婆豆腐などより、比較的ライトな味わいの中華料理がベター。

鍋島 中汲みの種類と特徴

純米吟醸 中汲み

  • 精米歩合:50~55%程度(使用米により異なる)
  • 特徴:吟醸香が華やかで、口当たりがとてもなめらか。フルーティさと米由来の甘みが程よく感じられます。

純米大吟醸 中汲み

  • 精米歩合:50%以下
  • 特徴:より上品でクリアな味わい。繊細な果実香が際立ち、後味のキレも抜群。贈答用や特別な日の一本としても最適。

特別純米 中汲み

  • 精米歩合:60%程度
  • 特徴:吟醸酒ほど派手な香りはない分、米の旨みがダイレクトに感じられるタイプ。食中酒としても万能で、幅広い料理と合わせやすい。

季節限定酒

  • 「しぼりたて生酒」や「ひやおろし」など、季節ごとに限定的にリリースされる中汲みもあります。生酒ならではのフレッシュ感や、ひやおろしのまろやかさなど、季節の移ろいに応じた味わいの変化を楽しめるのが魅力です。

購入・保管のコツ

入手困難な理由

「鍋島 中汲み」は高い人気を誇り、特に限定流通のものが多いため、店頭に並んでもすぐに売り切れてしまうことが少なくありません。また、プレミア価格で取り扱う店舗もあるため、定価で手に入れるのが難しい状況です。確実に手に入れるには、正規特約店やオンラインショップの入荷情報をこまめにチェックすることが大切です。

正規特約店の利用

富久千代酒造は、全国各地に正規特約店を設けています。特約店では比較的安定して「鍋島 中汲み」を入荷していることが多く、適正価格で購入できる可能性が高いです。また、特約店によっては予約や取り置き対応を行っている場合もあるため、事前に問い合わせをしてみるのもおすすめです。

保管方法

日本酒は光や熱に弱いため、保管環境が味に大きく影響します。「鍋島 中汲み」のフレッシュな香りを保つためにも、冷暗所での保存を心がけましょう。特に生酒の場合は冷蔵庫での保管が必須です。開栓後はなるべく早めに飲み切るのがベストですが、数日かけて少しずつ味わいの変化を楽しむのも一興です。


飲む前に知っておきたいポイント

開栓時のガス感

「鍋島 中汲み」は、酒質によっては瓶内に微量の炭酸ガスを含んでいる場合があります。開栓時に軽く“プシュッ”と音がすることがありますが、これはフレッシュさの証拠でもあります。勢いよく吹きこぼれないよう、ゆっくりと開栓しましょう。

ゆるやかな温度上昇で味を試す

冷蔵庫から出したてのキンキンに冷えた状態と、しばらく室温で置いて温度が上がった状態とでは、同じ銘柄でも味わいがかなり異なります。最初は冷やして飲み、徐々に温度が上がるにつれて味の変化を楽しむのがおすすめです。香りがより立ち、米の甘みや旨みが増す瞬間をぜひ捉えてください。

飲み過ぎには注意

当たり前ですが、「鍋島 中汲み」は非常に口当たりがよく、アルコール度数を感じさせない場合が多いです。ついつい飲み過ぎてしまうこともありますが、適量を守って楽しむようにしましょう。特にフルーティ系の日本酒が初めてという方は、喉越しの軽やかさと香りの魅力に引き込まれやすいので要注意です。


「鍋島 中汲み」が愛される理由

地域への深いリスペクトと挑戦

富久千代酒造は、佐賀県の伝統的な酒づくりを守りながらも、新しい挑戦を続けています。地元の米農家と連携して高品質の酒米を育てたり、最新の醸造技術を導入したりと、常にアップデートを欠かしません。「鍋島 中汲み」は、そのような姿勢の結晶とも言えます。

完成度の高さとわかりやすい美味しさ

一杯含んだ瞬間に広がる豊かな香りと、嫌味のない甘み、そしてすっきりとしたキレ。日本酒をあまり飲んだことがない方でも、「鍋島 中汲み」のわかりやすい美味しさに引き込まれることが少なくありません。一方で、日本酒上級者も納得させる深みや複雑性も秘めているため、多層的なファン層を獲得しています。

世界的な評価とステータス

世界的な品評会での受賞歴や、多くの飲食店がこぞって採用している事実が、「鍋島 中汲み」のステータスをさらに高めています。国内外の日本酒ファンから熱視線を浴びている銘柄であることは間違いありません。


よくある質問(FAQ)

Q1. 「中汲み」と書かれていない「鍋島」とはどう違うの?
A. 「鍋島」は富久千代酒造が造る日本酒全体のブランド名です。「中汲み」は搾りの中取り部分だけを集めた特別な商品ラインで、品質や味わいにさらにこだわったものと言えます。

Q2. 生酒と火入れの違いは大きい?
A. 生酒は加熱処理を行わないため、フレッシュな香りと生き生きとした酸味が強く感じられます。一方、火入れのタイプはやや落ち着いた味わいになり、保存性も高まります。どちらが好みかは個人差がありますので、飲み比べるのも楽しいでしょう。

Q3. 開栓後はどれくらい日持ちする?
A. 日本酒は酸化に弱いため、開栓後はなるべく早めに飲み切るのが理想です。冷蔵庫で保管し、遅くとも1週間以内には消費するのが望ましいですが、味の変化を楽しむのであれば数日かけて飲み進めても構いません。

Q4. 価格帯はどれくらい?
A. 720mlで2,000円台~3,000円台、1.8Lで3,000円台~6,000円台が目安ですが、酒米や精米歩合、流通形態によって変動します。特に限定酒はプレミア価格が付くこともあるため、正規特約店での購入をおすすめします。


まとめ

「鍋島 中汲み」は、佐賀県の富久千代酒造が生み出す日本酒の中でも、特に高い人気と評価を得ている銘柄です。搾り工程の中でもっともバランスが良い中間部分だけを取り出すことで、フレッシュでありながら雑味の少ない、クリアな味わいを実現しています。フルーティな香りと米の旨みの調和、そして独特のキレの良さが魅力で、初心者から上級者まで幅広く支持されるのも納得できるクオリティです。

その一方で、年々需要が高まり入手困難になっているのも事実。手に入れられる機会があるならば、ぜひ試してほしい一本です。冷酒で楽しむもよし、常温で旨みを堪能するもよし。幅広い料理との相性が良いため、パーティーシーンや特別な日の乾杯酒としても活躍してくれます。季節ごとの限定酒も見逃せません。

日本酒の奥深さを再認識させてくれる「鍋島 中汲み」。その背景には、伝統を継承しつつ絶え間ない挑戦を続ける富久千代酒造の情熱と、佐賀県という土地が育んだ豊かな自然環境があります。もし近くの特約店やオンラインショップで出会うことがあれば、ぜひ手に取ってみてください。口に含むと同時に、その魅惑的な香味が心と体を満たしてくれるはずです。

「鍋島 中汲み」は、まさに佐賀が誇る日本酒シーンの宝石のような存在。飲み手の感動を呼ぶ至福の一杯を、あなたもぜひ味わってみてください。これからの日本酒ライフが、より豊かで彩りに満ちたものになることでしょう。

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